今は誰もが尾行や張り込みのターゲットになる時代。あなたの背後は大丈夫か?

今は誰もが尾行や張り込みのターゲットになる時代。あなたの背後は大丈夫か?

「自分は尾行されたことも張り込みされたことがない。そんなのはテレビか映画の中だけの話だ」と思っている人も多い。しかし、そうでないかもしれない。誰かが誰かを調べようと思ったら、尾行・張り込み等が発生する。「誰かを調べる」という需要は意外に多いのである。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

結構な数の人が尾行・張り込みされているのかもしれない

世の中には公安にマークされている人もいるし、刑務所に何度も出入りして警察に動向を監視されている人もいる。宗教団体に追われている人もいれば、暴力(DV)夫から逃げている人もいる。世の中はいろんな人がいる。

こうした人は、しばしば相手から尾行されたり、張り込みされたりする。

尾行や張り込みと言えば、特殊な人しか経験しないものだと思っていたら、ごく普通の家庭の夫や妻が経験することもあるようだ。日本の探偵の仕事は90%は浮気調査であると言われているのだが、浮気調査というのは早い話が尾行と張り込みである。

それにしても、探偵業というのは日本にどれくらいあるのだろうか。

探偵業は警察庁が管理しており、正式な探偵業を営んでいる会社は必ず警察庁に「探偵業届出証明書」を出す必要がある。警察庁は察庁生活安全局生活安全企画課が『探偵業の概況』を出しているのだが、最新の令和元年の概況を見ると届出数は6066件となっていた。

日本に、6066件も探偵業があるとは……。

ひとつの探偵事務所が年間でどれくらいの案件を扱うのか分からないのだが、仮に平均して月に5件ほどだとすると年間60件、とすれば探偵業で年間36万3960件、そのうちの90%が浮気調査だとすると32万7564件となる。

ざっくり調査数約30万人だとすると、年間約30万人の一般人が尾行されたり張り込みされたりしているということになる。もし、この数字が現実には3分の1としても、10万人である。

尾行されるというのは何か特殊なことのようなイメージがあるが、このように考えると結構な数の人が尾行・張り込みされているのかもしれないと想像力が働く。少なくとも、私たちが漠然と想像している以上に尾行されたり、張り込みされたりするケースがあるようだ。

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想像している以上に多くの尾行・張り込みが行われている

さらに言えば、他人を尾行・張り込みするのは探偵だけではない。たとえば、ストーカーも頻繁にターゲットを尾行・張り込みしている。2020年に警察に寄せられたストーカー相談は2万912件だった。

ストーカー相談は、「気付かれた案件」が報告されているのであって、実際には気付かれていない尾行・張り込みもあるはずだから、相談件数の10倍以上の尾行・張り込みが起こっていたとしても不思議ではない。

何が言いたいのかというと、私たちは尾行や張り込みがされているという意識はほとんど持たないが、裏側では私たちが想像している以上に多くの尾行・張り込みが行われているということだ。

若い女性の中には毎年のように違う男性から尾行・張り込み等のストーカー被害を受けている女性すらもいる。女性は注意を怠っていたらいつでも性的な被害に遭う。そのため、男性よりも尾行や張り込みには敏感であると聞く。

逆に男はかなり無防備な人が多いので、尾行されていてもまったく気付かない傾向があるとも言える。「自分は尾行されたことも張り込みされたことがない。そんなのはテレビか映画の中だけの話だ」と思っている人も多い。

しかし、そうでないかもしれない。誰かが誰かを調べようと思ったら、尾行・張り込み等が発生する。「誰かを調べる」という需要は意外に多いのである。

尾行と言えば、かつては一流企業が内定の決まった学生を尾行することもあったようだ。素行調査と、家庭調査のためである。銀行・証券など顧客の預金や資産を預かる企業はことさら調査に力を入れていた。最近は、プライバシー保護のためにそうした調査は控えられていると聞く。

あるいは、かつてはどこかの名門家庭が子息の結婚相手の家柄を調査することもしばしばあった。相手を迎え入れるに当たって、出自や出身を調査して、家柄に合わないと思ったら「結婚お断り」をしていたのである。

今でも結婚前調査が行われているというのは、「結婚前調査」で検索すると、それを謳う探偵業の広告も出てくるし、9100万件も検索結果が出てくる。

家柄を見たり、酒・ギャンブル・ドラッグ・深刻な病歴・素行も調査して、売春地帯をウロウロしているような危険でだらしない男は一瞬にして弾くということが営々と行われているというのが検索の結果を見ても分かる。それだけ調査されている、ということである。

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ますます尾行・張り込みが「増えている」という実感がある

事業家のまわりには大金が動く。大金が動くところには「マルサ」も動く。マルサとは国税局査察部である。「査察」というからには探偵のような調査もまた行われるということだ。

金の動きを解明するために、調査対象の行動から交友まですべてを調べていくのである。当然のことながら、尾行や張り込みも入る。

「俺はただの一般人だ。尾行したければすればいい。いちいち知ったことか。俺を調べても何も出てこないよ」と思う人もいるだろう。

しかし、場合によっては侵入窃盗(空き巣)を狙っている犯罪者があなたの家を照準に定めて、家に誰もいなくなる時間を調べたり、どこに出かけているのかを調べたりするケースもある。空き巣をするグループは、前もって下見が行われ、家人の出入りの調査をすることもある。

空き巣は年々減っているのだが、それでも令和元年は5万7808件もあった。住宅への侵入に限って言えば2万8936件である。これら事件の少なからずは、前もって家人の出入りを把握するために、尾行・張り込みが行われている可能性もある。

相手の目的が何にせよ、自分の知らないところで得体の知れない人間に尾行されたり張り込みされたりするというのは気分の良いことではない。

自分のプライベートを探られるというのは、何もなくても不愉快である。芸能人や著名人ではなくても、自分のプライバシーは尊重して欲しいと誰もが考える。しかし、追跡者《トラッカー》は、そのプライバシーを暴くためにやってくる。

最近はちょっとしたYouTuberでも、Instagramerでも、地下アイドルでも、尾行されて嫌がらせを受けたりして事件になっているのだが、私自身は社会にますます尾行・張り込みが「増えている」という実感がある。

ここ3年のデータを見ても探偵業の開設は増えているし、ストーカー被害の相談も増えている。探偵業やストーカー被害が増えているということは、尾行・張り込みされている人が増えているということに他ならない。

著名人であっても一般人であっても、何らかの事情を抱えている人は、尾行や張り込みはいつでも仕掛けられると考えておいた方がいいように思う。特に女性は誰でも気をつけた方がいい。

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相手を探すよりもまず相手を撒《ま》くことを考える

尾行や張り込みに気付くことはできるのだろうか。

公安の尾行や張り込みは意外に分かるようだ。公安にマークされている立場の人と話したことがあるのだが、公安は「尾行している、張り込んでいる」というのを隠しているようで隠していない。

自分たちが見張っているというのを見せることで、ターゲットを無謀な行動に走らせないようにする効果を狙っているのかもしれない。極秘な任務については、公安も巧妙な尾行・張り込みを行っているのだろうと推測する。

プロの探偵や手慣れたストーカーは、簡単に気付くような尾行・張り込みは決してしない。たとえば、相手の1メートル先をこっそり歩くような、そんな真似はしない。

十分に離れたところで尾行し、しかも途中から人を入れ替えて気付かれないような手口も使う。何にしろ気配を感じられたら商売にならない。尾行は巧妙に隠され、最後まで気付かれないまま任務を終える。

とは言え、「もしかしたら自分は尾行されているのかもしれない」と直感のようなものが働くこともある。

女性もそうだが、尾行されていると思ったら相手を探すよりもまず相手を撒《ま》くことを考えた方がいいとプロは言う。相手を見つけて逆上させたり、相手をより警戒させたり、相手を間違えたりすると、いずれもリスクとなる。

撒くと言ってもどのように撒くのか。

満員電車に紛れるとか、人ごみの中に入って遊泳するように動いていくとか、デパートで何回もエレベーターに乗り降りするとか、タクシーを何度も乗り継ぐとか、黄信号で急に走って道を渡るとか、そういった方法はありきたりではあるが追跡者を悩ます行動であるようだ。

ただ、最近は発信器(GPSトラッカー)が仕掛けられ、何をしようが簡単にスマートフォンで追跡もできるようになっている。こうした技術の進歩がますます尾行・張り込みを容易にするわけで、油断のならない時代になっているように思える。

あなたの背後は大丈夫だろうか?

『「ストーカー」は何を考えているか(小早川 明子)』

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