香港はすでに中国に侵略された。香港の自由や民主主義はもう二度と戻らない

香港はすでに中国に侵略された。香港の自由や民主主義はもう二度と戻らない

ほとんどの香港人は、中国共産党政権の監視と支配の中、香港に残る。香港には彼らの生活があり、仕事があり、友人がいて、家族がいる。外国への移住は、よほど資産がないと成し遂げることはできない。多くの香港人は涙を飲んで「中国人になる」しかないのだ。(鈴木傾城)

東京オリンピックと北京オリンピックの行方は未知数だ

東京オリンピックは2021年7月23日に開催される予定になっているのだが、本当に開催されるのかどうかは定かではない。

中国発コロナウイルスのワクチンの接種は世界各国で進んではいるのだが、人類は74億人もいる。人類がコロナウイルスに対する集団免疫を手に入れるのはまだまだ時間がかかる。少なくとも、2021年7月に何とかなるような問題ではない。

運営もゴタゴタしていて、マスコミはあたかも全力で東京オリンピックが失敗するような世論操作をしているかのようだ。世界でも東京オリンピックを強行するのは本当に正しいのかどうか議論があって、「延期すべき、もしくは中止すべき」という声もかなりある。

私自身は、東京オリンピックに関しては予断を許さないものがあると思う。つまり、強行も中止もあり得ると思う。

そして、オリンピックと言えば、もうひとつの懸念がある。それは2022年2月4日に開幕予定の北京オリンピック・パラリンピック競技大会の方である。こちらも、開催されるのかどうかは未知数だ。

欧米からは「ウイグル弾圧、香港弾圧を行っている中国でこうした世界大会を開くのは本当に妥当なのか?」という声も出ており、ボイコットの声もだんだん大きなものになっているからだ。

現在のところ、世界各国の180近い団体がインターネットで「北京オリンピックをボイコットせよ」と訴えている。ウイグル弾圧は「弾圧」というよりも「虐殺」という認識に世界は変わりつつある。

この中国の人権侵害に何も言わないのは日本の人権団体やマスコミだけだ。世界の人権団体は、中国共産党政権が異常な政権であることをしっかりと認識している。虐殺国家で平和の祭典であるオリンピック・パラリンピックを行うのは間違っている。

最後の最後まで北京オリンピックの開催では揉めるだろう。

中国共産党政権の独裁と強権は香港にも及ぶようになった

今はまだ世界がはっきりと認識していないことがある。それは「中国共産党政権は人類の敵」という概念だ。しかし、全世界の人々は中国という国が今までにないルール無視の大国であることを認識するようになっている。

今となっては中国を無防備に賞賛する人はひとりもいない。

中国は弾圧国家であり、侵略国家であり、無法国家である。すべての分野で中国共産党政権は世界と問題を起こしている。

欧米の情報が入ってこないようにインターネットに強固なファイヤーウォールを張り巡らせ、国内では異常なまでの情報統制を行って人民を監視・管理し、習近平の批判を少しでもしようものなら公安を使って摘発し、刑務所にぶち込む。

2020年は、この中国共産党政権の独裁と強権は香港にも及ぶようになった。

香港がこの中国共産党政権に飲まれるのを拒絶して民主化運動を始めたら、凄まじい暴力でそれを押さえ込み、民主化を守ろうとする活動家をことごとく逮捕していく。

その民主活動家のひとりである周庭(アグネス・チョウ)氏も逮捕され、彼女は重罪犯を収容する大欖女子懲教所(刑務所)に移送されて消息が途絶えた。世界はもう彼女がどうなってしまったのか知る方法がない。

かつて習近平のポスターに墨をかけた女性が公安に連れて行かれて精神病院に強制収監されて出てきた頃は精神が壊れてしまっていたという事件があった。周庭(アグネス・チョウ)氏がそのような状態にならないとは限らない。

香港はもはやかつての自由と民主主義が溢れていた場所ではない。中国共産党政権によって乗っ取られて自由も民主主義も奪われてしまった。香港での中国共産党批判は、もはや自殺行為なのである。(ブラックアジア:日本人は幸せだ。多くの国では政権を批判するというのは死に直結する行為だ

香港人は絶望し、多くの香港人が「もう祖国・香港は終わった」と認識して大量に外国に移住している。香港人が逃げているのは、主にイギリスと台湾だ。しかし、香港人は幸せではない。

香港人は台湾に移住してもイギリスに移住しても苦しむ

台湾は香港と同じく中国の侵略の脅威にさらされている国であり、多くの台湾人は香港人に同情的である。しかし、香港人が台湾になだれ込んでくることに対しては冷たい姿勢でいることも報じられている。

私たちから見ると香港人も台湾人も「同じ中国人」という意識があるが、台湾人にとって香港人は「中国人」であり、台湾人ではないという意識がある。つまり、台湾人にとって香港人は「外国人」なのである。

さらに、香港人の中には中国の工作員《スパイ》が紛れ込んでいるという事実もあるわけで、諸手を挙げて歓迎していると工作員に政治活動や工作活動を行われて国を危うくしてしまうという懸念もある。

国を越えて移住するというのは、どこの国の誰にしても大変なことなのだ。

もうひとつ、香港人が移住先として考える先は、かつての宗主国(マスターカントリー)であるイギリスだ。イギリス政府は歓迎しているのだが、イギリス国民はやはり懸念を持っている。

イギリス政府は数十万人の香港人を受け入れると言うのだが、今でも大量の移民が流入していることで元からいた白人たちは大反発を持っており、イギリス文化が破壊されるとして保守が台頭して「反移民」の運動を行って支持されている。

移民に対しては同情的な層も、大量の移民が入って来ると自分たちの税金が香港人の生活保護や支援に回ることを懸念している。そもそも、数十万人もの香港人が一気に入ってきたら、彼らの「仕事」はどうするのか? すぐに仕事が得られるほど、どこの国も甘くない。

さらに、こうした移民たちは「反中国」である。当然、イギリスは「反中国」陣営の拠点と化す。

イギリスは「香港移民を受け入れる」と宣言したことによって中国共産党政権に大きな抗議と反発を受けることになったのだが、実際に大量の移民が入り込むようになると、中国政府はイギリスに報復を行うだろう。

その報復はイギリス経済を追い込むかもしれない。EU(欧州連合)離脱で孤立化しているイギリスにとってもダメージは大きい。

うかうかしていると、いつでも領土を奪われる

ほとんどの香港人は、中国共産党政権の監視と支配の中、香港に残る。香港には彼らの生活があり、仕事があり、友人がいて、家族がいる。中国共産党政権に批判的であっても、それだけで「国を捨てる」という選択肢はなかなか取れない。

また、外国への移住は、よほど資産がないと成し遂げることはできない。金がない人間は国内での引っ越しすらもできない。多くの香港人は涙を飲んで「中国人になる」しかないのだ。

香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、もともと媚中派だ。習近平に忠誠を尽くし、香港を中国に差し出すことに余念がない。

習近平が「秩序の維持に成果を上げた」とキャリー・ラムを賛美すると、キャリー・ラムもまた「中央の思いやりと支持に感謝する」と述べて、お互いの蜜月を国内外に誇示している。

これを見て私は2021年1月には「もはや香港は中国になった」ことを強く認識し、もう香港が元に戻ることはないことも理解した。ここから民主化運動が盛り返し、世界を味方につけて香港を奪還するというのは、よほどのことがない限りは不可能だ。

次に香港が自由も民主主義を取り戻すには、中国共産党政権の崩壊がない限りはあり得ないだろう。

中国は弾圧国家であり、侵略国家であり、無法国家である。

香港を完全に手中に収めた中国共産党は、チベットも、ウイグルも、内モンゴル自治区も、飲み込んでしまうだろう。同時に、南シナ海を乗っ取り、台湾も本格的な侵略を開始し、日本の領土である尖閣諸島や沖縄の強奪にも乗り込んでいくだろう。

香港がいとも簡単に奪い取られたということに私たちはもっと大きな懸念を持つべきなのだ。うかうかしていると、香港やウイグルのようにいつでも領土を奪われる。領土を奪われたら、そこは中国人の土地と化す。元々いた人間は、今のウイグル人のように大量虐殺されていくことになる。

そんな暴力国家で、北京オリンピックなんかやりたがる人間の神経が分からない。「中国共産党が人類の敵である」という認識がないようでは、先が思いやられる。

書籍
『わが敵「習近平」 中国共産党の「大罪」を許さない(楊逸)』

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