鈴木傾城の執筆環境。今の環境はクラウド重視、M1チップでまた変化するか?

鈴木傾城の執筆環境。今の環境はクラウド重視、M1チップでまた変化するか?

執筆に使っているアプリは、最近はMacのOSに無料で付いてくる「Pages」を使っている。しかし、それは今年に入ってからで、それまではずっと「mi」というエディターか、「Atom」というエディターのどちらかを使っていた。使っていた期間が最も長いのは「mi」だ。どれくらい使っただろう。少なくとも10年は使ったのは間違いない。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

ずっとMacintoshを使ってモノを書いてきた

よく、「傾城さんはひたすらモノを書いていますが、どういうコンピュータを使って、どういうアプリを使って、どういう環境を整えているのですか?」と質問がくる。それも、毎年「恒例」のように同じ質問を違う人に受ける。

最近は同業者と言うか、作家やライターの人にも直接聞かれるようになったりして、情報交換をしている。今回は、少し細かく私の環境を書いてみたい。まず、今使っているメインのマシンは「Mac mini」や「MacBook Pro」である。

ブラックアジアを書き始めたのは2000年頃からなので、私はもう20年もブラックアジアを続けていることになるのだが、20年前はまだ「手書きでモノを書いている」という人もいたし、「ワープロ専用機を使っている」という人もいた。

しかし、2000年頃はすでに90%近くの作家やライターはWindowsで仕事をしていたはずだ。私もWindowsを所有していたので必要に応じてWindowsも使った。しかし、メインはずっとAppleのMacintoshだった。

それこそ、1990年代の始めから私はMacintosh派だった。

初めて触ったコンピュータ、初めて買ったコンピュータがMacintoshで、箱型の小さな画面のMacintoshも買ったし、ピザの箱くらいの大きさの平べったいMacintoshも買ったし、当時は最高機種だったMacintosh Quadraと呼ばれるものも買った。

ずっとMacintoshを使ってモノを書いてきた。当時使っていたワープロアプリは「EG Word」や「Nisus Writer」だったと思う。

一時期、MacintoshのOSがあまりにも不安定になりすぎてしまったことに嫌気をさしてMicrosoftのWindowsを使っていた時期もあった。しかし、スティーブ・ジョブズがアップルに復帰してしばらくして、OSが「MacOS X」になって安定したのを見計らって再びMacに戻った。

あまりにもMacintoshを使っている時代が長かったので、どうしてもWindowsの挙動に慣れなかった。

世間がWindowsを使っていたとしても、私は別に雇われ仕事をしているわけでもなかったのでMacintoshがマイナーであったとしても問題なかった。今でもそれは変わらない。

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ワープロソフトは「Pages」を使っている

執筆に使っているアプリは、最近はMacのOSに無料で付いてくる「Pages」を使っている。しかし、それは今年に入ってからで、それまではずっと「mi」というエディターか、「Atom」というエディターのどちらかを使っていた。

使っていた期間が最も長いのは「mi」だ。どれくらい使っただろう。少なくとも10年は使ったのは間違いない。

本当は今も「mi」が好きなのだが、「mi」が非常に遅くなって立ち上がりに異常な時間がかかるようになり、どうしてもそれを改善できなかった。さらに他にも理由があって「Pages」に移行した。今は「Pages」をメインにしている。

「mi」や「Atom」のようなエディターが好きだったのは、とにかく検索機能が充実していて、正規表現を自由自在に使えるからである。

作家やライターの中には「正規表現」と聞いても、使い方が分からない人も多いのだが、文字を商売にしている人は「正規表現」を覚えて得することはあっても損することは絶対にない。

改行を削るとか、文頭のスペースを削るとか、特定の文字をすべて太字にするとか、タグの中身を消すとか、そのような文字の検索や置換が自由自在にできる。

作家はプログラマーではないので、正規表現を深く覚える必要はまったくないのだが、基本的なことを覚えておいただけでも作業効率は絶大に向上する。

この正規表現を自由自在に使えるのが「mi」や「Atom」のようなエディターなので、私は今でも必要であればこれらのエディターを使っている。

ただ、「文字を書くだけ」という局面ではAppleが無料で出しているワープロソフト「Pages」をメインに使っている。高機能だからではない。軽いし、シンプルだし、何よりも無料だし、安定しているので使っている。

「書く」というの作業自体はシンプルなので、慣れれば「Pages」でも何ら問題はない。

ちなみにWindows上では「秀丸」というエディターを使っていた。Windowsは好きではなかったが、「秀丸」にはぞっこんだった。Macに「秀丸」があったらそれを使っていたかもしれないが、なければないで問題ない。「mi」がある。

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Mac、iPad、iPhoneを行き来できる

ところで、私が「mi」の起動に問題を抱えるようになってから、「Atom」ではなくて「Pages」の方に移行したのは、実はもうひとつの理由がある。それは、「Pages」のアプリはiPadでもシームレスに使えるからだ。

私はちょっとした旅にはMacのノートブックを持ち歩いていたのだが、ノートブックはやはり馬鹿でかい充電器等も含めて持ち歩くと、やたらと重い。私は今でもキャリングケースを引きずって歩くような旅が好きではなくて、数週間の旅でも小さなバックパックひとつで旅する。

以前は一眼レフも持ち歩いていたのだが、ノートブックにスマートフォンにそれぞれの充電器に一眼レフにレンズまで持ち歩いていると、もはや「小さなバックパック」というわけにはいかなくなった。

そこで私は、iPhoneの性能が上がったので一眼レフを捨て、ノートブックもやめてより軽いiPadで何とか代用できないかと思うようになった。

若いライターは「iPhoneひとつで何でもできる」と豪語する人もいる。文字入力は音声入力でやると打つよりも早い。それはすでに実用のレベルに達しているのは私も確認した。(ブラックアジア:旅先で原稿を書くのであれば、もしかしたらこの方法がベストになるのか?

しかし、私はそこまで割り切ることができなくて、書くならやはりiPadのサイズがないと欲求不満になる。ノートブックと違って、iPadは充電器も馬鹿でかいものは必要ない。キーボードは小さなものを持ち歩いて必要とあらば使えるし、必要なければ使わなくてもいいので身軽だ。

そうするとiPadでどのアプリを使うのか、という問題になってくるのだが、私が便利だと思ったのが「Pages」だった。

データはiCloudに保存する形にしておけば、MacからiPadへ、iPadからiPhoneへ、iPhoneからMacへと「Pages」というアプリを使いながら自由自在に行き来できるのである。

もちろん、こうした使い方は「Google ドライブ」でやってもできるし、MicrosoftのWordを使ってもできるだろう。私はApple派だったので「Pages」でそれを実現したというだけの話だ。

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「テキストファイル」にこだわる人もいる

「Pages」はiCloud経由でデータをシームレスに扱えるし、縦書きでルビも使えるし、PDFにして書き出せるし、動作もシンプルで安定しているので、検索機能が物足りない以外に特に不満は感じていない。

恐らく私はこの形でしばらくやっていくことになるのだろう。

ライターや作家の中には「テキストファイル」にこだわる人もいるのだが、気持ちはとてもよく分かる。

テキストファイルであると、コンピュータ業界が今後どのように変化しようとも、絶対に消えない基本的なフォーマットだからだ。Macだろうと、WindowsだろうとLinuxだろうと、テキストファイルは必ず使えて、どんなアプリでも開く汎用性がある。

拡張子が「.pages」だったら、「Pages」以外のソフトウェアで開かない可能性はとても高い。仮にAppleが凋落してMacもPagesもなくなったら、どこにも移行できないデータを抱える羽目になるか、移行作業に相当な時間がかかるようになることも考えられなくもない。

「Word」を使ったらMicrosoftに囲い込まれ、「Pages」を使ったらAppleに囲い込まれることになるので、それが嫌だという人もいる。だから、テキストファイルをクラウドに保存して、それをノートブックやタブレットやスマートフォンで行き来する人も大勢いる。

それは、その人のこだわりなのでやりたいようにやればいいと思う。

私はメインはMacOS上の「Pages」で執筆し、外に出て書く必要がある時はiPadでiCloud上の「Pages」のデータを読み込んで執筆し、場合によってはiPhoneでも「Pages」を編集する、という形になっている。

ただ、「Pages」は何でもできる非常に良いアプリだから使っているというわけではなくて、このアプリはシンプルでアップルのそれぞれのOSを横断できるから使っている。

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慣れたフォントは、慣れた服装のようなもの

ちなみに、以前にも書いたがキーボードは東プレのキーボード(Realforce for Mac)を今年から使うようになった。

以前はアップルのキーボード(Magic Keyboard)を使っていた。どんどん薄くなっていくアップルのキーボードはスタイリッシュではあるが長時間のタイピングには向いていない。腱鞘炎になりかけた。

東プレのキーボードに変えて、なぜもっと早くこれを買っておかなかったのかと後悔した。長時間のタイピングをする仕事に就いている人は、経費でこのキーボードを買った方がいいと断言できる。

日本語変換はATOKを使っている。ATOKはWindowsを使っていた時に覚えた日本語変換なのだが、相性の良さを感じて離れられない。これがiPadでもデフォルトで使えるようになれば嬉しいのだが、今のところはそうはなっていない。

Macの「Pages」上で使っているメインのフォントは「Osaka」の等幅フォントだ。今は「ヒラギノ角ゴ」がシステムフォントなのだが、OsakaフォントはかつてMacのシステムフォントだった。Windowsで言えば「MSゴシック」がこれにあたる。

「ヒラギノ角ゴ」に慣れている人にとって、「Osaka」等幅フォントはあまりにもゴツくて野暮ったく見えるようだが、私はもう30年近くこのフォントで暮らしてきたので何の違和感もない。このフォントが落ち着く。

「mi」や「Atom」でも「Pages」でも、実のところアプリは何でもいいと思ってしまうのは、「Osaka」等幅フォントが使えればどれでも似たような雰囲気になるので違和感がまったくないところから来ている。

慣れたフォントというのは、慣れた服装のようなもので落ち着く。

私はMicrosoftのWordや、フリーで出ている「LibreOffice(リブレオフィス)」などは使わないのだが、もし何らかの理由で「Pages」からこれらに乗り換えたとしても、「Osaka」等幅フォントが使えればたぶん違和感なく使いこなせると思う。

ワープロソフトと言えば、はるか昔からMacに存在していた「EGWORD」が「egword Universal 2」となって復活したので、懐かしくなって買った。ただ、Mac〜iPad〜iPhoneを縦断する使い方はできないので、なかなかメインで使えないでいる。

やはり、しばらくは「Pages」がメインの執筆環境ということになるのだろうか。

私自身は「今の段階では」このような環境でひたすらモノを書いている。たぶん、来年もこの環境が継続すると思う。

最近、Appleはインテルのチップをやめて独自の「M1」チップが搭載されたMacを出してきたのだが、これによってiPadやiPhoneで動いていたアプリがMacでも使えるようになってくるはずだ。

環境が変化するので、アプリ環境もまた変化するのは必至だ。もしかしたら、「M1」チップのMac上で、私の執筆環境もまた変化していくのかもしれない。すべては、アプリ次第だが、私自身は環境が変わっていくのを楽しみにしている。

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