男は視覚にとらわれる生き物だ。そして、性欲が思考の大半を占めている生き物だ。これは男自身が自覚していると共に、女の側もまたよく自覚している。だから、「夜の女」はとても派手で、セクシーで、挑発的な格好をしている。
そうしないと男が見てくれないからだ。目立つ格好をすることによって、一般の女性とは違うと言うことをアピールして声を掛けてもらえるようにする。
どこの国でもそうだが、歓楽街にいる女性はことさら熱帯の蝶々のように派手で美しい格好をした原色系の「夜の女」が多い。
タバコを片手にして壁にもたれかけ、通りすがりの男に挑発的な視線を向ける女性は美しいけれども、どこか物悲しい。このような典型的な「夜の女」を街で見かけたとき、私はいつもこのように思ったものだった。
「ああ、女を演じている女性がいるな……」
女を演じている女性という言い方は変であるのは分かっている。しかし、私は挑発的な格好をして街に立つ女性を見て、「女を演じている女性」という感覚が抜けない。
真夜中になると、彼女たちは「女性」という「性」をことさら誇張して男たちの視覚に訴えている。「女性性」を誇張した方が夜の世界では有利だと分かっているから「それ」をしている。
それは、本当の彼女の姿ではない。私はそれを知っている。なぜなら「朝の女性は違う」という経験を何度もしたことがあったからでもある。
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