
中国発コロナウイルスがもたらす不景気は、今後は大量の失業者を生む。失業は「強制アーリーリタイア」と言えなくもない。このまま、仕事を探すのではなくて引退してしまおうと考える人もいるかもしれないが、それができる人はほんの一部だろう。誰もが老後の金のことを考えて、一抹の不安を抱いて「働けるだけ働こう」と思うからだ。(鈴木傾城)
失業は「強制アーリーリタイア」と言えなくもない
アーリーリタイアというのは、「早期退職」という意味になる。40代、50代でアーリーリタイアできた幸運な人はたくさんいる。欧米では「アーリーリタイアすることが人生の幸せ」という人も多いので、最初からそれを目指す若者もいたりする。
そうしたアーリーリタイアのひとつの手法として、「先進国でバリバリ稼いで、引退後は物価の安い途上国で暮らす」というものもある。東南アジアの歓楽街に沈んでいるファランはその手のアーリーリタイア組も多い。
しかし最近、海外出張組や国外で暮らすアーリーリタイア組が、中国発コロナウイルスによる都市封鎖や生活の不便に耐えかねて帰国してしまったり、帰国を考えているという話をよく聞くようになった。
パタヤにいたファランも、歓楽街があるからそこにいたのに歓楽街が消えてなくなってしまったのだから、「もうパタヤにいる理由がなくなった」として潮が引くように帰国の途についている。
日本人の海外アーリーリタイア組と言えば、タイのチェンマイだとかマレーシアのペナン島に集まっていることで知られているのだが、彼らがどうしているのか、何を考えているのか、興味のあるところだ。
中国発コロナウイルスがもたらす不景気は、今後は大量の失業者を生む。失業は「強制アーリーリタイア」と言えなくもない。
このまま、仕事を探すのではなくて引退してしまおうと考える人もいるかもしれないが、それができる人はほんの一部だろう。誰もが老後の金のことを考えて、一抹の不安を抱いて「働けるだけ働こう」と思うからだ。
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アーリーリタイアの計算はすべて机上のもの
アーリーリタイアするためには、その後の人生を死ぬまで働かないで済むだけの貯金が必要だ。しかし、その金額は人によってまちまちで明確な答えはない。
仮に40代でアーリーリタイアした人がその後の人生の残りが40年だとすると、年間300万円で生きている人は、年金をアテにしないで計算すると、単純に1億2000万円が必要だということになる。
そもそも、普通のサラリーマンで40代にして1億2000万円を貯められる人はゼロとは言わないが、それほどいない。年間200万円で生きられる40代は8000万円で生きられるということになるが、40代で8000万円を貯蓄できるサラリーマンもまた希有だろう。
さらに半分の4000万円ではどうか。猛烈に働き、極度に節約した成功したサラリーマンの中には、40代で4000万円を貯めた人はポツリポツリ出てくるかもしれない。
では、この4000万円でアーリーリタイアは無謀なのだろうか。あるいは、不可能なのだろうか。アーリーリタイアではなく、セミリタイアに切り替えれば何とかなるかもしれない。
1年間で100万円くらいの収入になるアルバイトをして、足りない分は年100万円を補填するというセミリタイアの形にすれば何とかなる。
ただ、こうした計算はすべて机上のものである。病気になったとか、自堕落になって浪費癖がついたとか、インフレが来たとか、誰かにタカられたとか、そのようなことがあれば一気にプランが瓦解してしまう。
ちなみに東南アジアはあまりにも極楽な場所なので、物価は安いはずなのに、やたらと浪費がかさむ場所でもあるのはご存知の通りだ。
あるいは物価が安くても、衣食住すべてに日本並みの快適さを求めれば日本にいるのとそれほど変わらない出費になる。
さらにハイエナ稼業をやっている男は、「女性」という最強のワナが待ち受けているので、アーリーリタイアは破滅の一歩になりやすい。アーリーリタイアして破滅に追い込まれた人は、東南アジアに沈没している男には身につまされる話だ。そういう話はゴロゴロある。
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経済的不自由の中の時間の自由
アーリーリタイアを成功させるのに必要なのは「自制心」だ。働かないということは、貯金を取り崩して生きるということなのだから、自由に見えたとしても裏側では緻密かつ慎重な経済観念と自制が求められる。
アーリーリタイアすれば、自由気ままに生きられるようなイメージがあるのだが、実際にはアーリーリタイアしても常に「金の計算」「生活費の計算」から逃れられない。資本主義で生きているのだからアーリーリタイアしても金だけは飛んでいく。
時間はたっぷりある。しかし、貯金は刻々と消える。収入がないのであれば、最終的には貯金はゼロになるのだから、貯金の残高の減少で自分の死が刻々と迫っているようなイメージとなっていく。
アーリーリタイアで得られる自由とは、多くの場合は「経済的不自由の中の時間の自由」であると考える必要がある。それでも、「働くよりも自由な時間が重要だ」と思う人がアーリーリタイアに飛び込む。
ブラックアジアの読者の中にも、すでにリタイアして好きに生きている人もおられるかもしれない。あるいは、アーリーリタイアを夢見ている人もいるかもしれない。
あるいは「アーリーリタイアなど、とんでもない。死ぬまで働きたい」と考えている人もいるかもしれない。いや、そもそも「アーリーリタイアしたいが、そのような貯金がないので夢物語だ」と思っている人も大勢いるはずだ。
「隣の芝生は青く見える」と言われるが、毎日仕事に追われて生きている人に取って、アーリーリタイアしてブラブラ暮らしている人というのは素晴らしい人生に見えるかもしれない。
しかし、必ずしもアーリーリタイアが素晴らしいとは限らない。それは知っておく必要がある。
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自分がどのように生きたいかで答えは違ってくる
理想のアーリーリタイアがあるとすれば、数億円の資産があって配当だけで400万円以上あって、永遠に資産が減らないアーリーリタイアが可能な状況だ。
その場合、ほどほどの自制があれば、永遠に経済的自由の中でアーリーリタイアを楽しむことができる。しかし、多くのアーリーリタイア組はそうではない。貯金を食い潰す形のアーリーリタイアである。
充分な資金がないままアーリーリタイアすると、後の人生はどんどん目減りしていく貯金を見つめながら生きていくのが日常になるので、ストレスも相当なものになるはずだ。
ストレスと言えば、あまりにも社交的な人や社会的な結びつきが強い人はアーリーリタイアは難しいかもしれない。
仕事で得られるはずの充実感もなければ、仕事を通して得られる成長もない。友人も消えていき、社会からも必要とされずに疎外感を感じるようになる。
生き甲斐もないまま、ただ目減りしていく貯金を見つめて生きるということに耐えられなくなる人もいるはずだ。アーリーリタイアにはアーリーリタイアが生み出す解消できない苦しみのようなものが付いて回る。
一生涯に渡って仕事をしないでいい、というのは必ずしも幸せに直結するわけではない。そう考えると、ことさら「何もしないで生きる」ためにアーリーリタイアを目指すのは、すべての人が目指すべき合理的な生き方ではないのかもしれない。
コロナによって精神的にも人生が激変している人は多いはずだ。改めて、人生を考え直す人も増えている。自分に合っていない仕事は止めるべきだが、仕事すべてを止めるべきかどうかは、自分がどのように生きたいかで答えは違ってくる。
果たして、あなたはどうだろうか。

私自身はリタイアしていませんが、知人の欧米人や日本人でアーリーリタイア、リタイア組は何人も知っています。株式配当や不動産収入である程度の固定収入がある人もいますし、それなりの資産を築いてリタイアという人もいますね。
欧米人の場合、現地でパートナーを作って一緒に暮らしているというケースが圧倒的に多いです。日本人は一人で暮らしている人もけっこういますね。
ただ、タイは物価も上昇してきましたし、タイバーツ高なのもあって、ベトナムやカンボジアに移り住む人もけっこう出てきています。
リタイアするかどうかはともかく、よほど資産や収入があるのでなければ、現地レベルの生活にどれだけ適応できるか、というのが大きな要因ですね。鈴木さんも書かれているように日本並みの快適さ、日本食などを求めれば、タイでもベトナムでも日本で住むより割高になります。また、私はまったく付き合いはありませんが、現地日本人社会での付き合いも、日本食の居酒屋などに頻繁に行くことになるなどでけっこうな出費になると聞きます。
その上で、十分過ぎるくらいある時間をさほどお金を使わず過ごせるかどうか本当に人それぞれですね。ただ、よほど都会でない限り、車が必須(ということはガソリン代や保険代はそれなりにかかる)だったり、もちろん病気等での急な出費もあります。
結局のところ、大半の人にとっては、「日本より安く済むようだから、海外でリタイア生活をしたい」というのはほぼ確実に失敗するのでは?どこであれ、その地に住みたい、というのが先にあって初めて、収支の帳尻をつける生活が可能になるように思います。
海外に住むメリットは非居住者となって余計な税金を払わないことです。
とりあえず10億円くらいの金融資産をつくり
株式の配当金で生活していくのが目標です。
お金のためにイヤイヤ労働する生活はしたくないです。
余生を楽に暮らせる金融資産があれば、資産を取り崩して暮らしたほうが懸命です。東京電力株や、ホテルリートに億単位で投資していた人が他山の石です。
とても興味深い記事でした。少し前までは自分も定年まで働かず、
早めに身辺を整理して海外へ出ようと考えていました。
気の合う旅好きの先輩も退社し、中東へ移住したあと早く自由に生きるよう連絡を
くれたりしたのですが、自分はそこまでの気持ちが無かったです。
生活の為とはいえ、毎日の平凡な会社員生活の隙間に出かける海外での
体験を素晴らしく感じるのであって、日常になってしまうと、その感覚は
無くなってしまうことが分かっているからだと思います。
長年アジアを旅しても、さほど物価の安さを感じなくなりましたし
気候や住みやすさも含め、日本の良さを再認識したりもしています。
年齢的に強制アーリーリタイアの可能性も十分ありますが
働けるだけ働こうかと思っている今日この頃です。
私の場合、アーリーではないけれど日本で15年オーストラリアで25年働いてオーストラリアでリタイヤしました。オーストラリアの年金は悪くないです。感謝しています。医療水準も高く
現在の生活にも満足していますが、年を重ねるに連れやはり日本人だなと思うことが多いですね。