コロナで人口の15%が絶対貧困に。彼らが選ぶ2つの選択が社会混乱を引き起こす

コロナで人口の15%が絶対貧困に。彼らが選ぶ2つの選択が社会混乱を引き起こす

日本人が貧困に堕ちると、その多くは「一生懸命に働く」ことで何とか危機を脱することができると思う。今のところ、一生懸命に働くことで報われることが多い。それは正解である。ところが、途上国ではうまくいかない。すでに人々は一生懸命に働いてきた。自分の置かれた環境の中で、私たちの思う以上に途上国の人々は働いている。信じられないほどの安い給料に、信じられないほど劣悪な環境の中で、それこそ地を這って必死で働いている。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

パンデミックで全人口の15%が絶対貧困に

中国発コロナウイルスは今、ラテンアメリカ、アフリカ、南アジア(インド圏)のような地域で爆発的に広がっている。パンデミックは途上国で止まらなくなってしまっている。

その結果、もともと貧しかった途上国の人々はもっと貧しくなっていくことが予測されている。世界全体で見ると、絶対貧困の人たちの人口が11.2億人に増加する可能性があるとイギリスとオーストラリアの国立大学の研究者が発表している。

世界人口は約74億人だから、全人口の15%が1日あたり1.90ドル未満で暮らさなくてはならない人なのである。

日本人が貧困に堕ちると、その多くは「一生懸命に働く」ことで何とか危機を脱することができると思う。今のところ、一生懸命に働くことで報われることが多い。それは正解である。

ところが、途上国ではうまくいかない。

すでに人々は一生懸命に働いてきた。自分の置かれた環境の中で、私たちの思う以上に途上国の人々は働いている。信じられないほどの安い給料に、信じられないほど劣悪な環境の中で、それこそ地を這って必死で働いている。

たとえば、インドの炭鉱夫は40度を超えるような地中のトンネルの中で危険な掘削作業に従事しているが、その賃金はいずれも日本円で一日500円にも満たない。

インドで農業に就いている労働者は炎天下の中で黙々と農作業をして一日280円を稼ぐのがやっとだ。働いていないのではない。必死で働いている。その上で、絶対貧困と化しているのである。

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なぜ必死で働いている人が貧困化してしまうのか?

問題は「なぜ必死で働いている人が貧困化してしまうのか」という部分にある。誰でもできる仕事は、賃金が安い。それは全世界で共通している。しかし、途上国は他にも大きな問題がある。

それは「搾取」である。

途上国ではどこの国も、非常に激しい格差が問題になっているが、途上国の格差はその多くが「搾取構造」が生み出していると分析されている。

上に立つ人間が、賃金を公平に分けるということをしない。上位の特権者がまず儲けを搾取し、次にマネージャーが搾取し、次に現場監督が搾取し、そして飢え死にするかしないかのギリギリの賃金を実際の労働者に渡す。

労働者がどれだけ必死で働いたとしても、その取り分は常に上の人間たちであり、その労働者ではないのである。だから、搾取構造のある中で「一生懸命に働く」選択をするのは得策とは言えない。

単に自分を搾取している上の人間たちをさらに富ませるだけになるからだ。

この搾取の光景は途上国では露骨だが、もちろん途上国だけの問題ではなく、先進国でも存在する。

欧米先進国はもちろんのこと、日本に存在する。労働者を酷使して上の人間だけが富むシステムを取り入れた企業は、日本では「ブラック企業」と呼ばれる。ブラック企業を見ても分かる通り、どんなに一生懸命に働いたとしても、それが自分の懐ではなく、経営者の懐を潤わすだけなのである。

働けば働くほど搾取の度合いが高まるだけなのだ。だから、搾取構造のある世界では「一生懸命に働く」というのは報われない。

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非合法ビジネスをする。持っている者から奪う

働けば働いた分だけ自分の取り分が増えるのであればいいが、そうでないのなら、過剰に働いた分だけ無駄になる。いや、過剰に働けば、搾取構造のシステムをより強化してしまうことになるので、より不利となる。

途上国の場合は、ありとあらゆる職業がすべて搾取構造のシステムになっている。低所得層に堕ちれば堕ちるほど、苛烈に搾取されていく。つまり、一生懸命に働いたとしてもそれは自分の実りにならず、自分を搾取する人間を富ませるだけになって終わる。

そうした社会構造の中では、もはや「一生懸命に働く」という美徳は意味を為さない。搾取の中でギリギリまで追い詰められ、もっと他に効率的な方法を考えなければならない。そして途上国の一部の人間が辿り着いた結論がある。それが、以下のものだった。

「非合法ビジネスをする」
「持っている者から奪う」

「非合法ビジネス」と言っても、様々な種類がある。人身売買もそうだし、武器等の密輸もまたそうだ。しかし、その中でダントツの利益を生み出すのは、ドラッグである。

通常、富裕層は貧困層が売るモノに関心は示さない。たとえば、途上国の人間が売っている安っぽい商品を、先進国の人間はそれほど関心を持たない。

しかし、ドラッグだけは別だ。法の規制が緩い途上国ではドラッグを製造しやすい環境にある。そして、ドラッグは高値で売れる。

だから、途上国の非合法ビジネスの中で、超巨大なビッグ・ビジネスになっているのが「ドラッグ」なのである。ドラッグの売買で成功すれば、先進国の金持ちを超える金持ちになることも不可能ではない。

地獄のようなインド売春地帯を描写した小説『コルカタ売春地帯』はこちらから

それは生きるための方法のひとつとして選択される

もうひとつ、貧困層の若者が辿り着く道がある。それが「持っている者から奪う」というものだ。途上国の多くは、治安が悪い。それは、持たない者が必死に奪いに来るからだ。現地の金持ちもそうだが、外国人もまた恰好の獲物である。

外国人は金を持っている。外国人がどんなにみすぼらしい恰好をしていても、途上国まで来ることができるということ自体が金持ちの証拠である。だから、持っている者から奪うことになる。

あまりの搾取構造のシステムが強固で、それが打ち崩せず、極貧が極まっていけばいくほど、「持っている者から奪う」というのは生きるための方法のひとつとして選択される。途上国の治安悪化とは、要するに「持っている者から奪う」が日常になった光景である。

今、中国発コロナウイルスのパンデミックによって、先進国でも格差が激しく広がっている社会になっている。

企業は利益を追求することに汲々とするようになり、次第に雇用者を「低賃金の使い捨て」として扱うようになっている。途上国の搾取構造のシステムと似た光景が出現しているのだ。

こうした中で、低賃金の仕事をぐるぐると回りながら、どんな仕事をしても搾取されるだけになっていくと、先進国の貧困層もまた2つの道に進む人間が現れても不思議ではない。

「非合法ビジネスをする」
「持っている者から奪う」

もちろん、現在の先進国が明日から暴力国家になるというわけではない。しかし、貧困層の拡大が止められず、貧困層がいつまで経っても貧困のままに押しとどめられ、搾取構造のシステムが定着したとき、何が起きるのかは私たちは知っている。

2020年。パンデミックによってすべての先進国で失業者が増大し、貧困層が急激に拡大している。不穏な時代が忍び寄っている。

『[復刻版]絶対貧困の光景: 夢見ることを許されない女たち(鈴木 傾城)』

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