私の本を4冊出版してくれたラピュータという出版社が、昨今の出版不況によって力尽きてしまったのは以前に書いた。(ブラックアジア:ブラックアジアの出版元である「ラピュータ」が力尽きてしまったこと)
この4冊のうちの1冊『絶対貧困の光景: 夢見ることを許されない女たち』は、書き下ろしの内容が多かった。この書籍も売春の世界を扱っていることは扱っているのだが、売春の世界だけでなく、物乞いの女性たちや、スラムの村の子供たちの話なども書いている。
今日、この『絶対貧困の光景: 夢見ることを許されない女たち』を電子書籍として[復刻]することにした。
[復刻版]絶対貧困の光景: 夢見ることを許されない女たち
すっかりインドから縁が切れていたはずなのに
『絶対貧困の光景: 夢見ることを許されない女たち』は私にも思い入れが深い書籍でもある。
この書籍を書いたのは2014年のことなのだが、私がインドを何度も何度も反芻するように行っていたのは、その10年前の2003年から2004年頃だった。
インド売春地帯をさまよい歩いていた日々のことはこちらにまとめている。ハイエナ稼業をして生きていた頃で、もっとも過酷な時期だった。インドの売春地帯は苦行に近かった。(売春地帯をさまよい歩いた日々:インド・バングラ編)
インドに行かなくなって10年経っても私はずっとインドのことが頭に離れなくて、10年もずっとインドに関心を持ち続けていた。
インドの経験もあまりにも強烈だったので、その時に知り合った女性をモデルにして小説まで書いたほどだ。(コルカタ売春地帯: インド最底辺の女たちとハイエナの物語)
『売春地帯をさまよい歩いた日々』でたっぷりインドの話を書いて、さらに小説でも書きたいと思うくらい「インド売春地帯の体験」は、私にとっては強烈だったということでもある。
2014年頃は、もうすっかりインドから縁が切れていたはずなのに、私はしばしばインドのことを思い、インドで知り合った女性たちのことを想った。
それで、ふと10年ぶりにインドに向かった。一口に「10年」と言うが、10年は誰にとっても短い時間ではない。さすがに10年も経てばインドの貧困問題も解決している部分もあるのだろうと私は何となく思っていた。
しかし実際に10年目にインドを再訪すると、私の思いは甘かったことを知る。インドは経済発展して、どんどん経済的に豊かになっているはずだった。実際には、インドの底辺(ボトム)はどうだったのか。
貧困はまったく何も解決していなかった。貧困層は貧困のまま、物乞いは物乞いのまま、貧困売春もそのまま、10年前に訪れたことのあった売春宿もまた10年という時の流れなどなかったかのように「そのまま」残っていた。
4月からすぐに[復刻版]を出そうと動き始めた
複雑な思いを抱いて日本に戻った。そこから生まれたのが、この『絶対貧困の光景』だった。
そんな経緯があって生まれた書籍なので、ラピュータが消え去って一緒にこの書籍も消え去ってしまうのはとても悲しく思い、4月からすぐに[復刻版]を出そうと動き始めた。
原稿は私に著作権があり、書籍で使用した写真もすべて私が著作権がある。会社が清算された以上、著作権はすべて私に戻っているのでその方面は問題ないのだが、問題は書籍の最終データが私の手元にはないことだ。
そこで、私が最初にしたのは、この書籍を編集してくれた編集者にコンタクトを取ることだった。復刻するために、この書籍の最終的な版のデータを手に入れたい。
しかし、すでにラピュータは事業清算しているので会社は残っておらず、サイトの消えており、所有している名刺の会社のメールアドレスも使用不可になっている。
そのため、かろうじて知っていた編集者の個人使用のメールアドレスに連絡を入れたのだが、それも不通だった。仕事熱心で、几帳面で、こまめな人だったのだが、出版不況に飲まれて失意にあるのかもしれない。
復刻するにあたって最終的に校了になったPDFファイル、もしくはInDesignファイルを手に入れることだったのだが、ラピュータの人たちとは誰とも連絡が取れなくなってしまっている。
私の手元にあるのは3校のゲラ(校正刷)なので、これを私の持っている最初のテキストデータと付き合わせながら2ヶ月かけて原稿を整備し、やっとのことで電子書籍のスタイルに合わせたデータに整えて、電子書籍化を終わらせた。
「ブラックアジア X(エックス)」、その他の企画
私はラピュータで他にも3冊の書籍を出している。この中で「ブラックアジア パタヤ編」をのぞく他の2冊については、そのままの形で復刻するつもりはなく、書籍の内容を取り込んだ上で、『売春地帯をさまよい歩いた日々』の国別の区分けで電子書籍化しようと思っている。
書籍版では誌面に限りがあるので、『売春地帯をさまよい歩いた日々』から抜粋して書籍化できたのはほんの「一部」だった。
今度は、より内容を網羅した形で電子書籍化して、万一このサイトが「不適切なサイト」として問題が発生した時でも(今のところは過激なコンテンツは会員制の中だけなので問題ない)、『売春地帯をさまよい歩いた日々』のようなコアのコンテンツは、きちんと残るようにしたいと思っている。
幸か不幸か、2020年はコロナ禍で外出が減っていて、執筆や作業を行う時間がどの年寄りも多く取れるので今までになく作業が進みそうだ。
ちなみに今、この他にも「2つ」の毛色の違った話(企画)も進んでいる。
時期が来たら報告したい。コロナ禍で外を出歩く機会が減るとやたらといろんな仕事が進んでいくので、2020年は私には「人生で一番出歩かないで仕事をした年」として記録されそうだ。

おめでとうございます。電子書籍はマンガしか読んだことないんですが、良い機会なので読んでみたいと思います。
ちなみにブラックアジアを読むまでインドはまったく関心なかったのですが、ブラックアジアを読んでから一生行かない国に指定しました。w
数年程前、3冊購入させて頂きました。(カンボジア、インド、インドネシア)
電子書籍に移らないといけないなと思いつつ、実態が残る書籍版に愛着を感じてしまいます。また、読み返したいと思います。
紙で本を読むのはめっきり減りました。
本屋にも行かなくなりました。
電子書籍に慣れると荷物が軽くなるし、置き場に困らない。
本好きな人の方がむしろ電子書籍ではないかな?
> この他にも「2つ」の
> 毛色の違った話(企画)も進んでいる。
どんな企画なのだろう? 楽しみです!
動画コンテンツとか、傾城さんと読者との間、読者相互間の双方向的な意見のオンライン上でのやり取り、等でしょうか。
尚、私事になりますが、現在、密かに起業することを目論んでおります。
当方はしがないサラリーマンですが、今日のコロナ禍やそれに伴う経済状況に起因し、勤務先の業績が良くなく。現時点では勤務先はなんとか持ちこたえてはいるものの、従業員の勤務日数や給与の抑制が実施されております。
借金や在庫を持たずに済む、かつ、現時点での自分の知識や、身の回りの道具、幾つかの得意技を活かせるものを念頭に、通勤時や在宅時にネットで情報を引っ掻き集めています。
微々たるものではあっても、ある程度の成功を収めるのか、それとも徒労に終わるのか…..
ハイエナがうろつきハゲタカが飛び交う、この弱肉強食の「邪悪な世界」で、出来る限り「もが」いていこうと思います。
こちらも会社の売上が壊滅状態(製造業界)。
ボーナスは出るのか出ないのか?
ウーバーイーツでもやるかと同僚と話してます。
(ジョークっぽく本気w)
お互いがんばりましょう。