コロナが炙り出す貧困格差。貧困であればあるほどコロナにかかりやすい現実

コロナが炙り出す貧困格差。貧困であればあるほどコロナにかかりやすい現実

コロナ禍は、社会の格差を炙り出しているというのは全世界で見られる光景だ。富裕層は衛生観念のしっかりした空間で、社会的距離もしっかり取った生活ができて、場合によっては数ヶ月も家から出なくても普通に生きていける。資産がたっぷりあれば、いくらでも自粛できるのである。しかし、どん底(ボトム)で暮らしている貧困層は違う。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

今後は約20億人が貧困に落ちることになるのか?

中国発コロナウイルスの爆発的感染(アウトブレイク)は、先進国から途上国へとフェーズが変わった。今、新型コロナウイルスが凄まじく広がっているのは、南米、インド、ロシア、アフリカである。

こうした国々では医療設備が貧弱であり、国家の基盤も脆弱なので、大量の感染者と死者を出すことが懸念されている。ブラジルなどはすでに最悪の状況になっているのだが、混乱が続けば続くほど経済はダメージを受ける。

そのため、社会のどん底(ボトム)に落ちてしまう人たちは急増することが予測されている。ニューヨーク・タイムズ紙はコロナによって今後は約20億人が貧困に落ちることになると指摘している。

これは、アフターコロナがどんな時代になるのかを計らずも示している。アフターコロナは、再び全世界で貧困が広がる世界になるということである。東南アジアや南アジアでも例外ではない。約20年に渡って減り始めていたどん底(ボトム)の世界は、再び広がる時代になっていくのだ。

私自身は、「アフターコロナの時代」とは「貧困の時代」であると認識している。コロナはまだ終わったわけではない。第二波・第三波がこれからもやってくる可能性は十分にある。

コロナの問題が長引けば長引くほど貧困は世界を覆い尽くして巨大な社会問題と化していく。

ブラックアジアでは有料会員を募集しています。よりディープな世界へお越し下さい。

最貧困の弱者を助けることはできるのか?

私は東南アジアのスラムや歓楽街をさまよい歩くことに費やし、貧困に落ちた女性たちと過ごし、あの貧困の荒んだ空気の中で人生を消耗してきた。

東南アジアや南アジアの経済発展は、貧困の光景を少しずつ確実に消し去る動きだった。しかし、今後は動きが逆流するのかもしれない。「どん底(ボトム)」がどんどん広がっていき、極度の貧困が再び私の目の前に現れるのかもしれない。

あの、最貧困が……。

インドがこの難問をうまく切り抜けられるかどうかは五分五分だ。貧困層は、衛生に気をつけようと思っても、劣悪な生活環境の中ではなかなかうまくいかないことも多い。

スラムでは清潔な水もなければ、もともと狭い家屋でひしめき合って暮らしているので、社会的距離を取ることもできない。

インドは「アジア最悪のコロナ汚染国」となる可能性がある。現在のところ、感染者は約13万人にのぼっており、一日で数千人が増えるという状況だ。

私がインドを足繁く行き来していた頃に知り合った物乞いの女性は、10年後に再び会ったら何も変わらないまま相変わらず物乞いをして生きていた。

インドは新興国として発展し続けて中産階級も増えてきたが、路上を見ると、それまでと何一つ変わらない絶対貧困で暮らしている人たちが群れをなして存在していた。それが変わってきたのが2010年代の後半だった。

やっとインドでもグローバル経済が回り始め、最先端の産業も根付くようになり、人々の教育水準も上がっていき、ほんの少しずつかもしれないが、豊かさを実感する人が増えていた。

2020年。その経済的環境は木っ端微塵に破壊された。

1999年のカンボジアの売春地帯では何があったのか。実話を元に組み立てた小説、電子書籍『スワイパー1999』はこちらから

 「この国と我々の家族は21年間立ち遅れる」

モディ首相は「パンデミックを制御できなければ、この国と我々の家族は21年間立ち遅れることになる」と述べた。3月のことだった。そこからインドは都市封鎖(ロックダウン)に入るのだが、このロックダウンは5月に入った今も徐々に緩和されながらも続いている。

しかし、今になってもインドでは一日に3000人以上もの感染者が現れており、感染の封じ込めができているとは到底言い難い。はっきり言おう。インドでは都市封鎖をしても感染の拡大を止められなかった。

だが、インドはこれ以上のロックダウンを継続できない。すでに2ヶ月近いロックダウンによって経済は壊滅状態と化しており、特に貧困層は支援を受けていたとしても立ちゆかない状況となっている。

そのため、6月に入ったらインドのロックダウンは大部分が解除されていく。それが「さらなる感染の拡大」を意味するものであっても、もはやどうしようもない。

効果的な治療薬もワクチンも2020年に登場するのかどうかは分からない。登場したとしても全世界に広く流通するのは2021年の春以降になる。だとすれば、もうインドの感染拡大は「あきらめるしかない」というのが現実だ。

かなり強く「マスクの着用」「社会的距離」「手洗い」などを新しいルールとして強制し、スラムでも厳しいルールによって共同体による縛りが効かせて乗り切るのがインドの取れる最大限の手法だ。

それでも感染は広がるだろう。

「この国と我々の家族は21年間立ち遅れる」と言ったモディ首相の危機感は最悪の方向で実現しそうな勢いとなっている。

インドネシアの辺境の地で真夜中に渦巻く愛と猜疑心の物語。実話を元に組み立てられた電子書籍『売春と愛と疑心暗鬼』はこちらから。

コロナ禍は、社会の格差を炙り出している

このコロナ禍によって、2010年代の後半あたりからやっと貧困から脱した人々は、再び貧困に逆戻りする。やっと貧困から抜け出せる時代になったと思った矢先にコロナ禍で突き落とされる。

ギリシャ神話では、神を欺いた罰として岩を山頂まで運んではまた落とされてそれを何度も運ぶ「シーシュポスの岩」の物語があるが、まさに這い上がろうとしてはどん底(ボトム)に落とされる絶望の人生が思い浮かぶ。

あまりにも残酷な人生である。

最貧困の人々が助かるには「運」が絡んでくる。運がある人は政府やNGO団体に助けられるだろうが、そうでない人は社会に無視されて放置される。

コロナ禍は、社会の格差を炙り出しているというのは全世界で見られる光景だ。富裕層は衛生観念のしっかりした空間で、社会的距離もしっかり取った生活ができて、場合によっては数ヶ月も家から出なくても普通に生きていける。

資産がたっぷりあれば、いくらでも自粛できるのである。

しかし、どん底(ボトム)で暮らしている貧困層は違う。住んでいる場所はもともと衛生観念が行き届いていない場所であり、ぎゅうぎゅう詰めの中で暮らしているので社会的距離なんか取れるはずもない。

さらに自粛なんかしていたらあっという間にカネがなくなってコロナで死ぬ前に飢え死にしてしまう。格差の下であればあるほど、どん底であればあるほど、コロナに感染しやすい環境になっている。

インドの人口は約13億5000万人。コロナは貧困層の地域で広がっている。インド最大のスラム街であるムンバイのダラピでの感染は致命的だった。(ブラックアジア:都市封鎖。インドのセックスワーカーは絶望的な状況に追い込まれてしまった

インドの地獄はこれからだ。

『コルカタ売春地帯 インド最底辺の女たちとハイエナの物語(鈴木 傾城)』

ブラックアジア会員登録はこちら

CTA-IMAGE ブラックアジアでは有料会員を募集しています。表記事を読んで関心を持たれた方は、よりディープな世界へお越し下さい。膨大な過去記事、新着記事がすべて読めます。売春、暴力、殺人、狂気。決して表に出てこない社会の強烈なアンダーグラウンドがあります。

一般カテゴリの最新記事