女性が考えている「普通の男」はいなくなり、弱肉強食の資本主義が襲いかかる

女性が考えている「普通の男」はいなくなり、弱肉強食の資本主義が襲いかかる

1990年に入ってから日本の狂乱バブルは急激に崩壊し、株式市場も不動産市場も二度と復活することがないほどダメージを受け、バブルに踊った人たちもことごとく破綻していった。日本の経済環境はますます悪化していき、日本人の男性は「三高」を満たすことが事実上「不可能」と化した。相変わらず女性が求める「高い属性(スペック)」に応えられなくなってしまったのである。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

婚活女性が考えている「普通の男」は普通ではなかった

女性は有利な結婚相手を探しているのだが、かつては「結婚するなら年収1000万円以上の男がいい」という凄まじく高望みで一方的な希望が婚活サイトに蔓延していた。

しかし、「30代前半の独身男性で年収1000万円以上」というのは日本にはわずかに0.14%しか存在しないと糾弾されて、最近は「高望みはやめて普通の男でいい」という話に変わった。

ところが、その「普通の男」の定義は「年収500万円以上・大卒・身長170cm以上・正社員・長男以外・清潔感がある・常識やマナーがしっかりしている」というものをすべて満たすものであるというので、かなり炎上した。

この条件をすべて満たす「普通の男」は、ほとんどいない。

年収500万円以上の結婚適齢期の正社員の未婚男性は、それだけ限って見ても全体の10%に過ぎない。この10%の中で、高身長で長男以外という属性も入れると、さらにパーセンテージは低くなる。

結婚相手が見つからないのは、「普通の男」ですらも難関だからである。しかし、婚活をしている女性にとっては現実が見えていないようだ。

実はこれと同じことを、バブル時代の日本女性も求めていたことがある。いわゆる「三高」というものだ。三高とは「高学歴、高収入、高身長」を指す。

この高学歴・高収入・高身長というのは、要するに「社会的地位の高い金持ちの男」を意味している。そういった男でないと結婚対象にしたくないと女性は言った。いつの時代でもそういう傾向はあるが、1985年から1990年までのバブル期は特にそれが顕著だった。

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「高学歴、高収入、高身長」を求めていた女性もいた

この「三高」は、最初は女性のシビアな要求というよりも、本音を少し交えた冗談のようなものだったかもしれない。しかし、中には本気でこの「高学歴、高収入、高身長」を求めていた女性もいたのも事実だ。

1980年代の後半になればなるほどバブルの度は深まっていき、世の中が「金こそすべて」に染まった。若い女性たちもまたそんな時代の風潮を敏感に感じ取って贅沢を求め、踊り狂うようになっていった。

本当に日本の女性たちが拝金主義に染まっていったのだ。

こうして女性の要求が高まっていけばいくほど、男たちは女性に反発したり絶望したり困惑したりした。そして、スペックを満たしていない男たちは、次第に結婚をあきらめるようになっていった。

何しろ世の中の男性のほとんどは「三高」に当てはまらないし、もし当てはまったとしても、愛よりも属性(スペック)で男性を選ぶ女性には嫌悪感や警戒心を持つ。心の底でこのように思う。

「こんな女たちは、自分が贅沢したいがために男を利用する気だ」

結婚してからもあれこれ要求されたらたまらないし、世の中はいつも良いときばかりではない。困難の時代に入った時、「三高」を求めて近寄ってきた女性はさっさと去っていくかもしれない。

つまり、世の中が拝金主義になって、結婚に対して女性の要求が増えれば増えるほど、男性は嫌気がさして結婚するよりもひとりでいることを望むようになる。

「三高」を求める女性は、要するに相手に寄生する魂胆があると男性は感じる。だから、女性が「金こそすべて」に染まってしまうと、男は女に猜疑心を抱いて自ら身を引く。

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「高いスペック」に応えられなくなってしまった

皮肉なことに、「三高」を求める女性が増えていく中で、時代は急激に変化していた。

1990年に入ってから日本の狂乱バブルは急激に崩壊し、株式市場も不動産市場も二度と復活することがないほどダメージを受け、バブルに踊った人たちもことごとく破綻していった。

日本の経済環境はますます悪化していき、日本人の男性は「三高」を満たすことが事実上「不可能」と化した。相変わらず女性が求める「高い属性(スペック)」に応えられなくなってしまったのである。

さらに2000年代に入ると、もっと悲惨なことになった。若年層は仕事すらも見つからなくなって、就職氷河期の中であえぐしかなくなったのだ。

小泉政権時代になると、日本でも自由競争という名の弱肉強食の資本主義が発足した。これによって企業は好きに正社員をリストラし、派遣労働者を使い捨てにするようになっていく。

若年層はみんな追い込まれた。正社員の雇用は極度に減り、非正規雇用しか仕事が見つからない人が増え、若者の貧困と格差が広がっていくようになった。

その結果、どうなったのか。男たちがもう女性と付き合うことをあきらめ、結婚もしなくなった。いや、しなくなったのではなく「できなくなっていった」のである。

そんな状況で、女性自身も非正規雇用やパートでしか仕事が見付からなくなっていた。

結婚できない女性が増え、さらに仕事も見つからない女性も増えた。そして、経済の悪化と共に離婚も増えていくようになり、今や三組に一組が離婚するような時代に入っていった。

子供を抱えて養育費ももらえず、苦境に堕ちるシングルマザーも増えた。2010年代に入ると、もう女性たちは「三高」を求めるどころではなくなってしまっていた。経済情勢が悪化すると、今を生きるだけで精一杯と化す。

そして、女性たちが考える「普通の男」もまた存在しなくなりつつある。

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「金こそすべて」だったはずなのにどん底に堕ちた

弱肉強食の資本主義は社会の標準となった。若者の貧困、シングルマザーの貧困、そしてリストラが恒常化したことによる中高年の貧困、増税や年金減による高齢者の貧困が社会を覆い尽くしている。

いまや、ほぼすべての世代に貧困が行き渡っていくようになっている。そうなると、若い女性やシングルマザーを特別に保護するような余裕も社会になくなっていき、日本の女性すべてがより苦境に堕ちていく。

「三高の男」どころか「普通の男」ですらも限りなく少なくなり、「普通の男」でない男たちはもう自分が生きるのに精一杯だ。

そのため若い女性は結婚もできず、結婚しても離婚の危機に陥ることが多く、シングルマザーは再婚は難しく、仕事でも最低限の賃金しかもらえなくなった。最後に風俗に流れ着いたとしても、そこでも競争過多で稼げるとは限らない。事実、風俗で稼げない女性を私は多く見てきた。

危険なのは、この状況は現在の資本主義の流れから見ると、決して良い方向に好転しないことだ。これから「雇用を削減するイノベーション」が進むことによって、彼女たちの苦境はますます大きくなってしまう。

女性が担っていた受け付け業務も消え、単純な一般事務の仕事も消え、ウエイトレスのような仕事も機械が担い、サポートのコールセンターも人工知能が対応するようになるのだ。パートの、レジ打ちも消えていく。

今まで女性の就いていた職場が、まるで狙い撃ちされているかの如く、ことごとく消え去ってしまう。今後、この女性たちが今度どのようになっていくのかは誰にも分からない。

バブル期の日本女性は「金こそすべて」だったはずなのに、皮肉なことに、それを強く望んだ時期から崖から突き落とされるかのように社会状勢が悪化している。そして、女性たちはどん底に堕ちた。

もう国も、会社も、男性も、誰も女性の苦境を気にかけない。家族との関係が希薄であれば、家族すらも防波堤にならない。つまり、日本女性は自分で自分の身を守らなければならなくなっている。

生き残れるか破滅するか。日本女性は、まさに過酷で残酷な資本主義の生存競争の真っ最中にある。

『デリヘル嬢と会う2: 暗部に生きる女たちのカレイドスコープ (鈴木 傾城)』

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