植松聖。妄想と錯乱で支離滅裂な男が起こした重度障害者大量殺人の行方

植松聖。妄想と錯乱で支離滅裂な男が起こした重度障害者大量殺人の行方

植松聖は神奈川県相模原市緑区千木良の知的障害者施設「津久井やまゆり園」に刃物を持って忍び入り、意思疎通のできなかった知的障害者を次々と殺害していった男である。いったいこの男はなぜこのような事件を起こしてしまったのか。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

「重度障害者は安楽死すべき」という持論

2020年1月8日。植松聖(うえまつ・さとし)の初公判があったのだが、植松聖は「深くお詫び致します」と述べた後に口の中に手を入れて暴れ出し、裁判は休廷になった。

植松聖は言うまでもなく、神奈川県相模原市緑区千木良の知的障害者施設「津久井やまゆり園」に刃物を持って忍び入り、意思疎通のできなかった重度知的障害者を次々と殺害していった男である。

殺害前からすでに友人やインターネットで犯罪予告を出していて、入所者の知的障害者を明確に殺害する意図を持って施設に侵入し、刃物で次々と首や身体を刺していた。結果的には19名が死亡し、26名が重軽傷を負うという凄惨極まりない事件となった。

植松聖はこの施設で働いていた職員だった。施設に入居している障害者たちに暴行したり暴言を吐いたりする問題行為もあった。

その上、介護職員でありながら「重度障害者は安楽死すべきだ」という主張を繰り返し、施設側から批判されていた。

植松聖が激しくそれを主張して意見を変えなかったために解雇に近い形で自主退職に追い込まれて、「危害を加える恐れがある」と警察に通報されていた。それほど「重度障害者は安楽死すべき」という持論を強く持っていたということだ。

この男は中学の頃から酒とタバコに染まり、大学生になるとクラブで出回っているドラッグをやり始めるようになり、身体に刺青を入れて、半グレたちと付き合うようになっていた。

植松聖は帝京大学卒業だが、卒業してから運送会社の仕事やデリヘルの運転手などの職を転々として、「津久井やまゆり園」に非常勤職員と勤務するようになっていた。

しかし、ここで植松聖は重度障害者と接触し、独自の持論を持つようになった。「重度障害者は安楽死すべきだ、抹殺すべきだ」という持論である。

この極端な持論は、かなり強い思い込みとしてこの男の脳に刷られたようだが、この「思い込みの強さ」は、この男の行動を説明する一つのキーワードでもある。

植松聖は中学の頃から酒とタバコに染まり、大学生になるとクラブで出回っているドラッグをやり始めるようになり、身体に刺青を入れて、半グレたちと付き合うようになっていた。

ブラックアジアでは有料会員を募集しています。よりディープな世界へお越し下さい。

私は障害者総勢470名を抹殺することができます

ドラッグが思い込みの強さを深化させていた可能性は十分にある。

植松聖は働きながらも相変わらずクラブに出入りし、マリファナや危険ドラッグに高じていたことが分かっている。「マリファナは効かない」というので、徐々に危険ドラッグの方に移行していたということなのだが、マリファナと危険ドラッグではその悪影響は相当違う。

ヘヴィードラッグに似た成分が含まれた危険ドラッグは、マリファナと違って著しく精神を破壊してしまうのである。

2015年には介護施設の非常勤職員の仕事以外に、刺青の彫り師の仕事にも弟子入りしていたのだが、師は「ドラッグを使用している可能性が濃厚だ」と判断して植松聖を破門していた。

植松聖はこの彫り師にも「重度障害者は抹殺すべき」という持論を語っていたのだが、その持論は、この男が衆議院議長・大島理森氏公邸に訪れて渡した手書きの手紙によって明らかにされている。ちなみに、この手紙には冒頭からこのように書かれていた。

『私は障害者総勢470名を抹殺することができます』

植松聖がこの狂気に満ちた手紙を衆議院議長の大島理森氏に渡そうと思っていたのは、この男が「重度障害者を安楽死すべき」というのを大島理森氏に支援してもらうつもりだったからだ。

日本国と世界平和の為に何卒よろしくお願い致します。想像を絶する激務の中大変恐縮ではございますが、安倍晋三様にご相談頂けることを切に願っております。

私が人類の為にできることを真剣に考えた答えでございます。衆議院議長大島理森様、どうか愛する日本国、全人類の為にお力添え頂けないでしょうか。何卒よろしくお願い致します。

1999年のカンボジアの売春地帯では何があったのか。実話を元に組み立てた小説、電子書籍『スワイパー1999』はこちらから

「本格的な第三次世界大戦を未然に防ぐため」の実行

植松聖は手紙の中でこのように持論を進めている。

私は障害者総勢470名を抹殺することができます。

常軌を逸する発言であることは重々理解しております。しかし、保護者の疲れきった表情、施設で働いている職員の生気の欠けた瞳、日本国と世界の為と思い居ても立っても居られずに本日行動に移した次第であります。

理由は世界経済の活性化、本格的な第三次世界大戦を未然に防ぐことができるかもしれないと考えたからです。

障害者は人間としてではなく、動物として生活を過しております。車イスに一生縛られている気の毒な利用者も多く存在し、保護者が絶縁状態にあることも珍しくありません。

私の目標は重複障害者の方が家庭内での生活、及び社会的活動が極めて困難な場合、保護者の同意を得て安楽死できる世界です。

重複障害者に対する命のあり方は未だに答えが見つかっていない所だと考えました。障害者は不幸を作ることしかできません。

植松聖はそれが常軌を逸する発言であることを認めながら、保護者の同意を得て安楽死できる世界にすることは「本格的な第三次世界大戦を未然に防ぐかもしれない」と述べている。

障害者を抹殺すると言って、唐突に「世界経済の活性化」だとか「本格的な第三次世界大戦を未然に防ぐため」というのだから、この男の頭の中は何かしらの異様な妄想が詰まっていることが分かる。

妄想でなければ錯乱だ。様々な「思い込み」が妄想になり、錯乱になり、この男の頭の中を彩っていた。

実はこの手紙には奇妙な飛躍や文章が散見されている。いかに「思い込み」で生きていて現実感が喪失しているのかがよく分かる。

外見はとても大切なことに気づき、容姿に自信が無い為、美容整形を行います。進化の先にある大きい瞳、小さい顔、宇宙人が代表するイメージ。それらを実現しております。私はUFOを2回見たことがあります。未来人なのかも知れません。

障害者を抹殺すると言って、唐突に「世界経済の活性化」だとか「本格的な第三次世界大戦を未然に防ぐため」というのだから、この男の頭の中は何かしらの異様な妄想が詰まっていることが分かる。

鈴木傾城が、日本のアンダーグラウンドで身体を売って生きる堕ちた女たちに出会う。電子書籍『デリヘル嬢と会う2』はこちらから。

精神的に何が異常があるのは感じられる

さらに、この手紙には犯行計画も書かれていた。以下のようなものだ。

見守り職員は結束バンドで身動き、外部との連絡をとれなくします。職員は絶対に傷つけず、速やかに作戦を実行します。2つの園260名を抹殺した後は自首します。

作戦を実行するに私からはいくつかのご要望がございます。逮捕後の監禁は最長で2年までとし、その後は自由な人生を送らせて下さい。心神喪失による無罪。

新しい名前(伊黒崇)、本籍、運転免許証等の生活に必要な書類、美容整形による一般社会への擬態。金銭的支援5億円。これらを確約して頂ければと考えております。

手紙の冒頭には「障害者総勢470名を抹殺」と書いているのに、後半ではいつの間にか「260名を抹殺した後は自首」という話になっていて整合性が取れていないのが分かる。

整合性がないと言えば、他にも「重度障害者の安楽死」というテーマとはまるっきり関係のない医療用マリファナの話やパチンコの話やフリーメーソンの話などが、延々と書かれていた。全体を通して読むと、妄想と錯乱が混じっていて支離滅裂なのである。

植松聖は、当初は衆議院議長の確約が取れてから実行しようと考えていたようだが、それを前倒しにしたのは、「暴力団が自分を狙っている」と思い込んだからだ。ここにも妄想と現実の区別がついていない状況が見える。

「誰かが自分を狙っている」という妄想は覚醒剤使用者に多い症状なのだが、覚醒剤の成分が入った危険ドラッグによって生まれたものであったとしても不思議ではない。

犯行前日に、この男は彼女と高級焼き肉を食べて最後の晩餐にしているのだが、その後にマリファナを吸って高級デリヘルで女性を呼んで性サービスを受けている。強い妄想を持ちながら、こういう計画性は持ち合わせていた。

植松聖は小学生の頃は「まとも」で「優しい」子だったと当時の級友は語っている。おかしくなったのは、アルコールやドラッグに溺れるようになってからだ。

もともと思い込みの激しい性格がアルコールやドラッグで強化されて、強固で自分勝手な思い込みが妄想と錯乱を生み、それが悲惨な事件を引き起こしたのではないか。

裁判ではこの男に責任能力があったのかどうかが問われるのだが、事件時は心神喪失状態だったと判断されたら無罪になる。心神喪失とは「精神上の障害のため是非善悪を弁別できない状態」である。

「重度障害者は安楽死すべきだ、抹殺すべきだ」と強く思い込んで、正義のためにそれをしたと考えていた植松聖は心神喪失状態だったのだろうか。

最近は日本の司法もおかしくなっているのだが、日本がこの男をどのように裁くのか、私は注目している。

『大量殺人の“ダークヒーロー”――なぜ若者は、銃乱射や自爆テロに走るのか?(フランコ・ベラルディ(ビフォ) )』

ブラックアジア会員登録はこちら

CTA-IMAGE ブラックアジアでは有料会員を募集しています。表記事を読んで関心を持たれた方は、よりディープな世界へお越し下さい。膨大な過去記事、新着記事がすべて読めます。売春、暴力、殺人、狂気。決して表に出てこない社会の強烈なアンダーグラウンドがあります。

事件カテゴリの最新記事