香港の民主派の大躍進を許した中国。中国共産党政権のほころびが見えてきた

香港の民主派の大躍進を許した中国。中国共産党政権のほころびが見えてきた

中国の現在の拡張主義は、遅かれ早かれ行き詰まる。拡張主義が通用するのは、中国が経済成長している間だけだ。大量の公安、大量の兵士、そして武器弾薬や装備はタダではない。周辺国を弾圧するにも、延々と武力とカネを注ぎ込まなければならない。そんな無駄金が続く国家は、世界中どこにもない。アメリカですらもアフガニスタン・イラク戦争で傾いた。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

香港の民主派の躍進は中国には「予想外」だった

中国への抗議デモで揺れる香港では、2019年11月24日に区議会議員選挙が行われたのだが、投票率は過去最高で民主派は452議席中389議席を占めるほどの大躍進を見せつけて親中派に圧勝するという一コマがあった。

これは実に意外なことでもあった。

なぜなら、中国は圧倒的な権力と政治掌握能力を持っていて、事実上「香港に君臨している」と言ってもいいような状況だったのに、選挙不正もせず、情報操作もせず、そのまま民主派の圧倒的勝利を許してしまったからだ。

中国は香港の民主化を容認したのだろうか。もし、容認していたのであれば、中国はストリートで民主派を露骨かつ暴力的に弾圧などしないし、キャリー・ラムに対しても民主派と話し合うように命令していただろう。

しかし、そういう動きは一切なく、街では相変わらず抗議デモと対立している。

状況を鑑みると、香港の民主派の躍進は実のところ中国政府には「予想外」だったことが見て取れる。「まさか、こんな結果になるわけがない」「親中派が圧倒的に勝利するはずだった」ということなのだ。

この中国共産党政権の思い違いの「理由」を分析したのが、ニューズウィーク紙の記事だった。(ニューズウィーク:香港区議選:中国共産党は親中派の勝利を確信していた(今はパニック)

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誰も進んで共産主義国家の一員になりたくない

中国共産党政権は、香港に対して以下のような思い込みを持っていたというのである。

・民主派は治安を乱す存在で嫌われている。
・サイレント・マジョリティーは親中派である。
・したがって選挙では親中派が圧倒的勝利を得る。

このような思い込みは民主派の圧倒的勝利によって誤りだったことが発覚したのだが、ニューズウィーク紙はなぜこのような「誤った思い込み」が生じていたのかというのを分析している。

中国共産党政権は上記のようなプロパガンダを発信していて、それで香港人が洗脳されたと思い込んでいたのが原因ではないかというのである。

しかし、実際にはそのプロパガンダを信じている香港人はほとんどおらず、信じていたのはプロパガンダを発していた当の中国共産党政権とその取り巻きだけだったという結論だ。

香港特別行政区行政長官であるキャリー・ラム自身も選挙前には「親中派のサイレント・マジョリティーが動けば選挙は親中派が圧倒的になる」という中国共産党政権のプロパガンダをそのまま口にしていた。

しかし、結果はそうならなかった。「高い投票率と民主派の圧倒的勝利」という結果から見えてきたのは、香港のサイレント・マジョリティーは親中派ではなく、民主派支持だったということなのである。

なぜ、香港の国民の大半が民主派なのかというのは、別に深く考えるまでもない。中国共産党政権みたいな独裁的で不自由で不愉快な存在に、香港を支配して欲しいと思うのであれば、そちらの方がどうかしている。

誰も進んで共産主義国家の一員になりたくない、ということだ。2019年11月24日の区議会議員選挙では、それが一夜にして証明された。

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世界は紛れもなくマネー・ファースト

中国はウイグル人を100万人以上ものウイグル人を強制収容所に放り込んで拷問・洗脳・臓器摘出などの人権侵害の限りを尽くしている。市民は監視され、ウイグル文化は完全に破壊され、ウイグル人は弾圧の中で抵抗する術(すべ)すらも奪われている。

こういった中国共産党政権の非人道的な行いは、今まで西側諸国は見て見ぬふりをしてきた。なぜなら中国市場は巨大で、その市場にアクセスすることで西側諸国は大きな利益を生み出していたからだ。

中国を下手に批判して市場を失うくらいであれば、何も言わないで黙って儲ける方が合理的だという判断が西側諸国の政治家にも事業家にも投資家にも働いていた。

「難民が可哀想だ」とか言って国内に大量の難民を入れたドイツのメルケル首相ですらも、ドイツ企業が中国で儲けるためにウイグルで起きている人権侵害にはまったく目もくれなかった。「難民が可哀想だ」と思っても「ウイグル人が可哀想だ」とはならなかったのだ。

資本主義社会ではすべて資本の論理で世の中が動く。もっとストレートな言い方をすれば、世の中はカネで動いている。間違えても、人権や正義や理想では動かないのである。常日頃は偉そうに「人権」だとか「平等」だとかを謳っていても、現実は見ての通りだ。

マネー・ファーストだったのだ。

民族浄化されようとしているチベットやウイグルの人々は国際世論に見捨てられた中で、絶望的な戦いをするしかない状況にあるのはそういうことだった。

しかし、アメリカは自分たちの知的財産を中国が好き放題に盗んで自分たちに対抗するようになってきた中国に対して、いよいよ「危険な敵だ」という認識を持つようになり、トランプ政権になってから激しく対立するようになってきた。

そんな中で、アメリカは中国が激しい人権侵害をウイグルやチベットで行っているということを問題視するようになってきた。

共産主義国家に次の覇権を絶対に渡さないという強い意志がここにある。誰も進んで共産主義国家の一員になりたくないので、米中新冷戦がより鮮明になっていくと、西側諸国は「中国は敵」という認識で結束することになるはずだ。

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中国のほころびが見えてきた

中国は、常に拡張主義の歴史と思想を持っており、周辺国を次々と飲み込んでいく国家だ。チベットもウイグルも独自の文化を抹殺して中国文化に置き換えるようなことをしているが、これはチベットやウイグルだけの問題ではない。

中国は周辺国をすべてカネとワイロで取り入って国そのものを乗っ取ろうと画策している。

東南アジアで言えば、すでにカンボジアやミャンマーは中国のワイロ攻勢に屈して中国べったりの国になっているし、フィリピンもドゥテルテ大統領は中国からワイロをもらって国を売り飛ばそうとしている。

フィリピンという国のライフラインはすでに中国が掌握していて、たとえば電力網に関しても中国企業が支配しており、フィリピンと中国との紛争があれば中国はいつでもフィリピンの電力を遮断することができる。(CNN:フィリピンの電力網、中国が「いつでも遮断可能」 内部報告書が警告

一帯一路は経済的植民地主義であり、最初から相手に「返せない」と分かっていてカネを貸して重要な土地を奪い取っていく。パプアニューギニア、バヌアツ、フィジー、サモア、ミクロネシア、スリランカ等々はそうした中国政府の「債務のワナ」に落ちてしまっている。(時事ドットコム:「債務のわな」に警戒感 中国の浸透加速も―スリランカ大統領選

果たして中国のこういったやり方は、永遠に続くのだろうか。もちろん、続くはずがない。遅かれ早かれ行き詰まる。拡張主義が通用するのは、中国が経済成長している間だけだ。

大量の公安、大量の兵士、そして武器弾薬や装備はタダではない。周辺国を弾圧するにも、延々と武力とカネを注ぎ込まなければならない。そんな無駄金が続く国家は、世界中どこにもない。アメリカですらもアフガニスタン・イラク戦争で傾いた。

拡張主義の最大の致命的欠陥とは何か。それは、拡張する経済的余裕がなくなった瞬間に、周辺からも内部からも反撃が同時発生して、一瞬に瓦解する可能性を秘めていることだ。

現在の中国に経済成長が失われたとき、弾圧が継続できなくなり周辺国の反乱を抑えられなくなっていく。これは当然の帰結でもある。そうなると、やがて中国は混乱して「分裂」する可能性もある。

現在は「中国の分裂」は非現実的に思えるかもしれない。しかし、中国経済が崩壊したり長期低迷期に入ったら、いよいよ分裂の道筋は見えてくる。巨大になりすぎた物は、その巨大さが仇になって自壊するしかない。

今の中国は、そのような存在なのである。

中国は今、アメリカと対立するようになってから経済が停滞するようになっている。情報統制されているが、中国ではいよいよ国営企業も莫大な負債を抱えてデフォルトするようになっている。経済停滞による暴動も各地で発生している。

そして、香港でも対応に失敗して民主派を大躍進させるという失態を演じた。中国のほころびが見えてきた。

『中国でいま何が起きているのか 米中激突、香港デモ、経済ショック…激動の中国社会を現地レポート(邱 海涛)』

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