一国二制度の崩壊。香港は激しい対立と衝突で破壊され尽くされるのだろうか?

一国二制度の崩壊。香港は激しい対立と衝突で破壊され尽くされるのだろうか?

そもそも、一国二制度というのは中国政府にとっては西側諸国の植民地の残滓にしか過ぎないものであり、本来であれば香港は中国政府が自分の意のままに支配して然るべきという意識がある。中国が特に「気に入らない」のは、香港に「言論・報道・出版の自由、集会やデモの自由、信仰の自由」があることだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

香港の激しい抗議デモ

美しかった香港は、今は戦場のように

逃亡犯条例改正案によって湧き上がった香港の抗議デモは、いまや香港が「中国化」を拒絶する長期の暴力デモになった。警察官が市民を催涙弾を放ち、銃で撃ち、リーダーを次々と暗殺し、大学に突入する。

美しかった香港は、今は戦場のようになってしまっている。

この香港の混乱の中で、2019年11月27日。アメリカのトランプ大統領は中国の圧政と戦う香港市民を力づけるように、「香港人権・民主主義法」に署名した。

この香港で一国二制度がきちんと機能しているのかをアメリカ政府が毎年検証し、「もし香港で人権弾圧などがあれば、それに関わった中国政府関係者に制裁を科す」というものである。

またその陰に隠れて目立たないのだが、「中国が香港を介してアメリカのハイテク産業を不正に輸入しようとしていないかもアメリカ政府が検証する」という内容も含まれていた。

もし、不正があった場合、アメリカは香港にもビザ発給などの優遇措置を見直しすることがあり得る。

香港市民は、このアメリカの支援に歓喜に湧き、1万人が香港中心部に集まってアメリカ国旗を翻してアメリカ国家を歌っている。民主主義アメリカは、民主主義のために戦う香港を見捨てなかった。

「中国の習近平国家主席と香港市民への敬意をもって法律に署名した」とトランプ大統領は言った。「中国と香港の指導者と代議員が友好的に隔たりを埋め、長きにわたって全ての人の平和と繁栄につながるよう希望している」とも言った。

しかし、北京(中国共産党政権)の見方はまったく違う。

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アメリカと中国との軋轢はさらに深刻化する

トランプ大統領が「香港人権・民主主義法」に署名した翌日、中国政府はすぐに「重大な内政干渉だ」「あからさまな覇権の行使である」と激しい勢いでアメリカを糾弾し、このような恫喝を口にしている。

「アメリカが独断専行をやめなければ中国は必ず報復措置を取る。悪い結果のすべては米国が負うことになる」

中国がアメリカの「香港人権・民主主義法」の報復として何を行うのかは、今のところまったく分かっていない。

現在、アメリカと中国は貿易摩擦緩和のために互いの報復措置の一部を撤回することを話し合っているのだが、中国が土壇場で意見を翻して合意がまとまらない可能性もある。

この合意がまとまらなければ中国もアメリカに高い関税をかけられたままで、経済成長が阻害され続けることになるのだが、トランプ大統領も中国による報復でアメリカの市場が揺らいだら大統領選挙に悪しき影響が出る。

トランプ大統領が中国に対して激しい対抗措置を繰り広げて「話ができない」と習近平が考えているのであれば、貿易摩擦緩和の合意を引き延ばしてトランプ大統領の落選に望みを託すというのも1つの戦略でもある。

ただ、トランプ大統領は合意を引き延ばせば引き延ばすほど、中国にもっと強い報復を科すと宣言している上に、「もし合意を渋るなら、自分が再選されたら容赦しない」と脅しまでかけているので中国に取って合意の引き延ばしはリスクにもなる。

そのため、中国は貿易摩擦緩和はいったん合意しておいて、アメリカに対しては「他の何か」を仕掛けるかもしれない。

アメリカの嫌がる何かを仕掛ける。

いずれにしても、香港の抗議デモにアメリカが介入することによって、中国との軋轢はさらに深刻化するわけで、米中新冷戦はより激しいものになっていくのは必至だ。香港は、その米中新冷戦の「最前線」となった。

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香港の問題は容易に収まることはない

香港はアメリカにとっても中国にとっても特別な地だ。中国は香港を利用して西側諸国と金融と経済で密接につながり資金や物資を動かして来たし、西側諸国もまた香港を足がかりにして中国とのビジネスを動かしてきた。

香港は、言ってみれば中国の「出島」としての役割を長らく果たしてきた。

香港はイギリスの植民地だったが、これが中国に返還されたのが1997年7月1日だった。この時、中国政府は「50年間は資本主義を採用し、社会主義の中国と異なる制度を維持する」と世界に向けて約束した。

すなわち「2047年まで」は香港は高度な自治が認められるはずだったのだ。しかし、中国は経済的に力を付けるようになってから露骨に香港の「自治」に介入するようになり、香港を中国化していこうとするようになった。

そもそも、一国二制度というのは中国政府にとっては西側諸国の植民地の残滓にしか過ぎないものであり、本来であれば香港は中国政府が自分の意のままに支配して然るべきという意識がある。

中国が特に「気に入らない」のは、香港に「言論・報道・出版の自由、集会やデモの自由、信仰の自由」があることだ。香港人は、自由に中国共産党政権を「批判することができる」し、その批判を全世界にばらまくこともできるのである。

中国共産党政権は本土では強い言論統制を敷いていて、言論・報道・出版の自由などいっさい認めていない。中国は香港を完全に支配して、そのようにしたいと思っているのだ。

一方で、香港が中国の支配下に入るというのは、もはや香港人も自由に中国共産党政権を批判・反発することができなくなるということであり、これによって自由主義・民主主義が崩壊するということを意味する。

どちらも譲れない戦いであるというのが分かる。だから、香港の問題は容易に収まることはない。混乱の火蓋は切られたのだ。この後、どのような結末が待っているのか、中国共産党政権も香港市民も分からない。

香港は、激しい対立と衝突で破壊され尽くされるのだろうか……。

『中国でいま何が起きているのか 米中激突、香港デモ、経済ショック…激動の中国社会を現地レポート(邱 海涛)』

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