貧困を克服する気持ちは、そうなれるという希望があるうち「だけ」機能する

貧困を克服する気持ちは、そうなれるという希望があるうち「だけ」機能する

貧困を克服するとか、貯金をするとか、豊かになりたいという気持ちは、そうなれるという希望があるうち「だけ」機能する。もし、貧困の中で生まれ、学歴もコネもなく、打開策が見つからない中でもがいていると、どうなるのか。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

フィリピンの根深い貧困

フィリピンの法律では一日の最低保証賃金は400ペソ(約826円)である。「一時間」ではない。「一日」だ。しかし、この法律は「あってなきがごとし」であり、実際にはフィリピンの貧困層は、一日400円から500円をやっとのことで稼いで生きている。

しかし、それでも仕事があるだけマシで、仕事が見付からないでストリートをさまよっている人も大勢いる。

フィリピンの失業率は5%から6%で推移している。そして、この失業者の60%近くが男性となっている。そして失業した男性の約78.4%は15歳から34歳が占めていた。

つまり、フィリピンでは「働き盛り」の男たちが働いていない。もともとフィリピンは超学歴社会であり、高卒以下はまともな仕事などない。一生懸命に働いたら評価されて上に行くようなシステムもない。

学歴のない人間は正社員になれず、終身雇用もなく、労働者は使い捨てである。契約は数ヶ月ごとなので、仕事を得てもすぐに解雇される。

もともとフィリピン人は根を詰めて働くような性格ではなく「明日のことは明日考えればいい」という楽天的な人たちが多いのはよく知られている。熱帯性気候の人々は、日本人のようにあくせく働かない。

そうした要因が重なり合い、フィリピンは今も貧困国である。

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貧困者が一番「カネが貯まらない」理由

フィリピンの貧困は根深い。フィリピンの極貧層だけが食べる新料理「パグパグ」を見ても、その貧困の度合いが分かる。(ブラックアジア:フィリピンの極貧層だけが食べる新料理「パグパグ」の正体を知りたいか?

私たちは「パグパグ」の正体を知って、思わず後ずさりするかもしれない。しかし、フィリピンのスラムの人たちは何と言うこともない食べ物でもある。カネがなければ、ないなりに人々は知恵を絞る。

「パグパグ」は、カネのないスラムの住民のひとつのソリューションでもある。フィリピンだけでなく、どこのスラムでも同じようなことが行われている。

こうした世界中のスラムを見たり、貧困者の群れの中に混じったり、貧困がもたらす害悪を見つめていると、しみじみ思うのは「どん底に堕ちたら本当にカネが貯まらないように世の中はできている」という事実だ。

貧困者が一番「カネを貯めなければならない」のに、肝心な貧困者が一番「カネが貯まらない」のである。

なぜか。フィリピンは家族主義だと言われるのだが、この家族主義が足を引っぱるからだ。不安定な仕事で何とか稼いでも、自分がカネを持っていたら、家族がいっせいにカネを貸してくれ、助けてくれ、何とかしてくれと言ってくる。

貧困層は「相互扶助、助け合い、お互い様」で世の中が回っているのだが、そのために自分のカネは自分だけで使うような環境にはならないのである。世界中どこの貧困層もそうなのだが、フィリピンは特にその傾向が強い。

貧困者のスラムは互いに助け合って生きている。助け合いが生命線だ。それによって福祉の乏しい世界で病気になって働けない人たちや障害を持った人たちも必要最小限でも生きていける。

しかし逆に言えば、その相互扶助の中で生きるということは、自分の持っているカネが一定額を超えると、必然的に家族やコミュニティに吐き出させられるということでもある。

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静かなあきらめと自暴自棄

貧困を克服するとか、貯金をするとか、豊かになりたいという気持ちは、そうなれるという希望があるうち「だけ」機能する。もし、貧困の中で生まれ、学歴もコネもなく、打開策が見つからない中でもがいていると、どうなるのか。

毎日毎日、カネに追われ、貧困に追われ、夢も希望も失い、最後には「どうしようもない」という気持ちになって、静かなあきらめと自暴自棄が生まれていく。自暴自棄に陥ると、カネを貯めて何とかしようという気力も向上心も失われる。

そうした自暴自棄の人々の姿を私は知っている。世界中の多くのスラムで、男が昼間から酒を飲み、昼間から路上で博打をして遊び、乏しいカネをさらに散財する姿を、これでもか、これでもかと見せつけられてきた。

女たちが必死で働いている横で、男たちが酒と博打で右から左に使ってしまうのである。自暴自棄が男たちの中で蔓延してしまっているのだ。

さらに、悪いことがある。自暴自棄の中で散財していると、どうしてもカネが足りなくなるので、多くの人が誰から何かしらの借金をする。そうすると、その借金がいつまで経っても返せなくなる。

次第に、借金を返すために借金をすることになり、一度はまった借金は減るのではなく、極限まで膨れあがっていく。

だから、スラムの住民たちは切羽詰まって犯罪者になっていく。あるいは、妻や娘を人身売買業者に売らざるを得ない羽目に堕ちていく。そして、自らは病気になりやすく、病気になっても医者にかからず、健康悪化で寿命を縮めていく。

極限の貧困の中では、そういった負のスパイラルが充満している。

こうした貧困は言って見れば「絶対貧困」であって、日本が問題になっている相対的貧困とは違って、より極限的なものである。

しかし、日本人も最底辺の人たちは徐々に極限的な貧困へ向かっているのも間違いない。(マネーボイス:日本で急増する「住所を喪失」した人たち~車上生活、漂流女子、8050問題が行き着く地獄=鈴木傾城

インドネシアの辺境の地で真夜中に渦巻く愛と猜疑心の物語。実話を元に組み立てられた電子書籍『売春と愛と疑心暗鬼』はこちらから。

普通の人でも半年で貧困に落ちる

日本で貧困が静かに増えていることは秘密でも何でもない。誰もが知っている。貯金がほぼゼロの世帯は想像以上に多い。全世帯の30%から40%は貯蓄ゼロである。

日本人の賃金はここ30年で下がり続けている。2019年に入ってから実質賃金も連続でマイナスになっている。2019年10月には消費税も10%に引き上げられて、貧困者はよりカネを遣わなければならない状況に落ちていく。

「年金の他に2000万円用意せよ」と政府は言い出しているのだが、今後は年金も減らされていく。受給年齢も引き上げられる。貯金があったとしても、消費税等によって人為的に物価が引き上げられるのだから、貯金もどんどん目減りしていく。

今後、日本が好景気に沸く局面が来るかどうかは不明だ。なぜなら、日本は少子高齢化の進行が進んでおり、構造的に内需が縮小していく一方だからだ。

日本の国民は今も少子高齢化には無関心のまま放置しているし、政治家もわざとなのかどうか分からないが、まるっきり動かない。

それでも世界経済が何とか好景気に沸いていれば日本にも利益が落ちてくるが、中期的には厳しい局面に入る可能性の方が高い。アメリカと中国が激しく対立して「新冷戦」に入っており、今後の景気動向は予断を許さない状況なのである。

アメリカを中国を締め上げているのだが、不景気に落ちるのは中国だけでない。アメリカも返り血を浴びる。そうすると、世界的に不景気になる。そうなるかどうかは分からないが、なりそうな気配が濃厚になっている。

当然のことながら日本も無関係ではない。グローバル経済の中に組み込まれている日本も、世界経済が悪化すれば、共に苦しむことになる。

不景気がくるたびに大量の人間が失職や賃金低下によってボロボロと貧困に落ちていく。仕事がなければ、普通に生きている人であっても半年で貧困に落ちる。たった半年で、永遠に抜けられない地獄に堕ちるには充分なのである。

日本で絶対貧困が生まれ、自分が絶対貧困に堕ちたら、そこから這い上がるのは相当難しくなると考える必要がある。

『貧困を克服するとか、貯金をするとか、豊かになりたいという気持ちは、そうなれるという希望があるうちだけ機能する』という現実はよく認識しておくべきでもある。這い上がるのが難しくなればなるほど希望は失われる。

『デリヘル嬢と会う2: 暗部に生きる女たちのカレイドスコープ((鈴木傾城))』日本で貧困が静かに増えていることは秘密でも何でもない。誰もが知っている。そして、女たちもまたアンダーグラウンドに堕ちていく。

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