「無職」か「極貧」か「自殺」か……。もはや日本国民は限界にまで来ているのだ

「無職」か「極貧」か「自殺」か……。もはや日本国民は限界にまで来ているのだ

現代の日本社会は、まるで若年層に次の3つの選択肢から好きなものを選べと言っているように見える。「無職」を選ぶか「極貧」を選ぶか「自殺」を選ぶか。このような閉塞的な社会は、これからもずっと続いていくのかもしれないが、もはや日本国民は限界に達している。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

日本国民はまさに搾取されるばかりとなっている現代

日本政府は1989年に消費税を取り入れて翌年にはバブルを崩壊させた。そして、景気が極度に悪化する中で1997年には消費税を5%に引き上げた。景気が悪い時に消費税を引き上げたらよけいに景気が悪くなるのは分かりきっている話だが、それでも日本政府は強行したのである。

案の定、より景気が悪化して経済縮小(デフレ)は先鋭化し、超就職氷河期によって若者が次々と経済苦に落ちた。

そうした状況の中で2000年代には小泉政権が発足したのだが、小泉政権は「身を切る改革」とか言ってフラフラになった企業を叩きつぶして、非正規雇用者をも拡大したので、ますます若者は貧困化した。

そして、2008年にはリーマンショックが起きて日本経済も轟沈し、マニフェストをひとつも守ることができない民主党政権が発足して経済だけでなく政治も混乱を極め、東日本大震災でも大ダメージを受けた。

それでも日本政府は頑なに消費税を下げることもなく、2014年には8%に、そして2019年には10%に引き上げて、経済成長を完全に放棄した。

2020年には中国から広がった新型コロナウイルスによって日本経済もボロボロになったが、消費税は10%のまま据え置かれ、いまや日本人は税金や社会保険料で給料の半分近くを政府にむしり取られるような国になってしまった。

今後も少子高齢化やSDGsなどを名目にして、今ある税金をどんどん引き上げ、さらには新しい税金も設置することになっている。社会保険料も引き上げられ、にもかかわらず年金受給額は減る。

若者の賃金は相変わらず低く、非正規雇用という不安定な働き方も広がるばかりとなっていく。今の日本国民はまさに「政府のATM」となって搾取されるばかりとなってしまっているのだ。

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「成功したら俺の手柄、失敗したらお前のせい」

岸田政権も減税の意志はまったくない。今後も何かにつけて税金を引き上げていくばかりとなる。多くの国民は実質的に可処分所得の減少に苦しむことになってしまう。分かりやすく言うと、私たちの使える金は減っていく。

そうなると、一番最初に追い詰められるのは、言うまでもなく今までぎりぎりで生活してきた人たちである。ひとり親世帯、預貯金のない高齢者、そして就職に厳しい若年層がみんなまとめて苦境に堕ちる。

岸田政権は「貯蓄から投資へ」と言って、「資産所得倍増プラン」をぶちあげたのだが、そもそも、国民の多くは30年近くも成長しない中で苦しんでおり、資産などほとんどないという世帯もかなりある。

資産を持たない多くの人たちを、岸田政権は置き去りにしようとしている。それが資産所得倍増である。

総裁選の前に言っていた「所得倍増プラン」も、職業訓練を受けさせて所得を倍増させるとか言っており、政府が国を成長させて国民を豊かにするというものではない。

社会の底辺でもがく人たちは、それこそ日々の生活をやりくりするだけでも四苦八苦しているわけで、悠長に職業訓練を受けている場合ではないし、そもそも職業訓練を受けたら自動的に資産が倍増するわけでもない。

「所得倍増プラン」と言ってしまったので、何かやっているフリをしているだけに見える。「資産所得倍増プラン」にしても、国民の貯蓄を投資に向かわせて大損したら国が補填するのかという問題もある。

要するに岸田政権のやっていることは、すべて根底に「自己責任」が付いて回り、「成功したら俺の手柄、失敗したらお前のせい」なのである。

その中で、今後は税金がさらに過酷になっていくのだから、日本国民の生活が楽になることなどない。

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数十社も面談を受けてことごとく断られる若者の立場

コロナ以前から日本は気がかりな事態が起こっていた。厚生労働省の発行した平成30年版「自殺対策白書」によると、若い世代の死因の第一位は以下の通りになっていたのである。

15〜19歳 自殺
20〜24歳 自殺
25〜29歳 自殺
30〜34歳 自殺
35〜39歳 自殺

若年層の自殺の原因は、「就職できなかった」「勤務問題で追い詰められた」というものが多い。どんなに努力しても就職できない。何十社、中には百社近くも面談を受けて、すべて断られる若者もいる。

「就職活動に失敗したくらいで自殺するなんて」と思う人もいるかもしれない。しかし、数十社も面談を受けてことごとく断られる若者の立場に立つと、それがいかに残酷なことであるのか想像できるはずだ。

「お前は必要ない」と繰り返し繰り返し言われ続け、「存在を否定される」のである。

感受性の強くて、感情が豊かで、とても素直な心を持った若者ほど、その現状に心が折れてしまっても、それは不思議でも何でもない。実際、ここで脱落して絶望のあまり自殺する若者がたくさんいる。

やっとのことで就職できても非正規労働だったり低賃金だったりして生活が成り立たず、ここでも将来に絶望して自殺に追い込まれることもある。

将来、結婚できないとか、子供が作れないというレベルではない。今の生活すらも成り立たないくらいの給料しかもらえないこともある。

さらに、何とか入った企業もブラック企業で死ぬほど酷使されて使い捨てにされて、心身共に疲れ果てて自殺に追い込まれていく若者もいる。すべて、「政治の貧困」がもたらした社会の荒廃であると言える。

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次の3つの選択肢から好きなものを選べ

もちろん、八方ふさがりになった若年層がみんな自殺するわけでもない。中には社会の想像以上の厳しさにショックと精神的ダメージを受け、そのまま引きこもってしまう若者もいる。百万人以上もの若者がそのような状態になっている。

1990年代にそうなった若者は、すでに40代や50代になってしまい、それが現代の「8050問題」へとつながっている。これについては拙著『ボトム・オブ・ジャパン 日本のどん底』でも詳しく触れた。

自殺する若者も働かない若者も結局は自己責任論で責められるのだが、働いても未来がないのであれば最初から人生を投げる若者が出ても仕方がない。引きこもりは自殺しないだけマシだとは言えるが、それが正しい姿であるとは言い難い。

日本政府が日本を成長させるために全力を尽くし、国民にはきちんと仕事があり、働けばどんどん豊かになるというのが正常な社会の姿である。しかし、今の日本はそれが実現できていない。

日本政府は税金を取りまくる以外はまったく機能していないので、日本を力強く成長させるような能力はないと思った方がいい。

少子高齢化をも放置している日本は、内需拡大もできないし、そこからイノベーションを生み出すということも難しい。高齢者は社会が変わるよりも変わらないことを望むので、社会は停滞するばかりになる。

今でさえもこのような状態なのだ。若年層はこのような社会の中で生きていかなければならない。

その上、これからも税金も社会保険料もひたすら上がるのだから、少子高齢化でただでさえ停滞している内需がもっと停滞して景気も悪化する。そのことがいかに危険なことであるのかは、議論する余地もない。

現代の日本社会は、まるで若年層に次の3つの選択肢から好きなものを選べと言っているように見える。

「無職」を選ぶか「極貧」を選ぶか「自殺」を選ぶか。このような閉塞的な社会は、これからもずっと続いていくのかもしれないが、もはや日本国民は限界にまで来ていると言ってもいい。

ボトム・オブ・ジャパン
『ボトム・オブ・ジャパン 日本のどん底(鈴木 傾城)』

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