生活保護の財源不足や年金大幅減額が起きると絶対貧困は一挙に姿を現す

生活保護の財源不足や年金大幅減額が起きると絶対貧困は一挙に姿を現す

ある日の夜中。新宿にある目立たないネットカフェに寄ってしばらくそこにいた。

今のネットカフェは、仕事が見付からず、アパートすらも借りられない人たちが孤独の中で流転しながら一夜を過ごす場所になっている。

特に深夜ともなると、切羽詰まったような、疲れ果てたような顔をした若い男女がひっそりとやって来ては小さな個室に消えていく。そして、暗い顔をした女たちもいる。デリヘルの待機場としてネットカフェを使っているのである。

大都会・東京の夜の街は浮かれている。しかし、ここはブラックホールのように喧噪を吸い込み、換気とPCのファンと個室に籠もる人たちの遠慮がちな咳しか聞こえない。

すでに日本の貧困はその底辺部で限りなく広がっており、最近では若年層男性から単身女性、シングルマザー、高齢者まで、限りなく貧困に陥る層が増えている。

要するに、もう貧困は性別も世代も境遇も関係なく、誰もが身近に感じる問題となりつつある。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

相対的貧困ギリギリ踏みとどまっている

このネットカフェを一歩出ると、まったく貧困とは縁のなさそうな恰好の若者たちがストリートを友人たちと歩きながら楽しそうに笑い声を上げている。彼らはネットカフェの住民とは違って未来は明るいのか。

いや、彼らとて決して順調とは言えないというのは、総務省が出している統計を見れば分かる。

日本では非正規雇用も増えて、さらに単身世帯も増えているのだが、この増え続ける単身世帯はすでに4割近くが金融資産を保有していない。景気は決して悪いわけではないのだが、それとは関係なく貯蓄ゼロ世帯もじりじりと増えている。

単身世帯と言えば高齢者も多く含まれているのだが、今や年金で悠々と暮らしていけるほど優雅な時代ではない。すべての世帯で見ても3割が貯蓄ゼロである。

にも関わらず2人以上の世帯が保有する金融資産の平均額は1200万円を超えており、こちらは逆に増えている。貯蓄ゼロ世帯がどんどん増えているのと同時に、資産を持っている人はそれを増やしている。

このあたりが「格差の拡大」を示している。

「金融資産の平均額が増えている」「貯蓄ゼロ世帯も増えている」というこの2つが同時並行で起きているというのは、危険なことなのである。

それでも日本では、インド、中南米、アフリカで見るような絶対貧困者の姿はほとんどなく、スラムらしきスラムもないのでまだ豊かな国に見える。

つまり、日本の貧困は「相対的貧困」でギリギリ踏みとどまっている。しかし、それはいつまで持つのだろうか。

すでに日本女性の中には日本の相対的貧困のひとつのラインである税引き所得が年112万円未満の人も多い。多くがギリギリのところにまで堕ちてきている。

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絶対貧困層は一挙に姿を現す

年112万円未満と言えば、月に換算すると約9万3000円であることが分かる。分かりやすく言えば、月9万3000円未満の人は日本では「貧困」に入る。

一方で絶対的貧困というのは、一日1.25ドル未満で生活している人のことを言う。これは月に換算すると37.5ドル、これを円に換算すると、37.5×120円で4500円である。

相対的貧困 月9万3000円未満
絶対的貧困 月4500円未満

「日本人に貧困者はいない」というのはよく言われるが、それは極貧(絶対的貧困)に堕ちている人はほとんどいないというニュアンスで使われている。確かに日本人で絶対的貧困に堕ちる人はなかなかいないだろう。

なぜか。日本は政府が社会保障費で極貧層が出ないように面倒を見ているからだ。しかし、政府の経済的基盤が弱体化したらどうなるのか。

たとえば、日本円が毀損して制御できないインフレが起きたり、生活保護の財源不足や年金の大幅減額が起きると「絶対貧困層は一挙に姿を現す」ということなのだ。

国のセーフティーネットにすがって生きている人は、そのセーフティーネットが消えると誰も助けられない。そのため、彼らが相対的貧困から絶対的貧困に堕ちるのは一瞬なのである。

この生活保護受給者は高齢者、単身世帯、障害者、シングルマザー等の増加と苦境によって年々増え続けている。2019年1月時点で163万7611世帯となっている。

「日本経済は回復途上」と言いながら、底辺を見ると、そうした政府の見解とはまったく違う姿を見せているのが分かるはずだ。

自力で稼げない人たちが政府にすがっているのだが、そのすがりつく先の日本政府もまた社会保障費の増大に苦慮しており、2019年10月には消費税が10%に上げられることになる。

年金受給年齢の引き上げ、年金削減、医療費削減は、いまや毎年検討されているわけで、いずれ国はどこかのタイミングで国のセーフティーネットにすがりつく貧困層を支えきれず、切り捨てることになる。

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とても脆弱な素材でできている

高齢者はまだ政治力がある。彼らはきちんと選挙に行き、自分たちの既得権益である年金が最後の最後まで守られるように選挙に関与し続ける。

そのため、国家が財政的困難に落ちていくと切り捨てるのは、いつでも選挙に行かない若年層になる。

さらに言えば、選挙に関心を持たない「女性」が最も弱い存在になる。

女性はもともと男性優位な社会の中では賃金や昇級で差を付けられている。アメリカでさえも「ガラスの天井」が話題になるのを見ても分かる通り、資本主義社会で女性は弱者の立場に追いやられている。

資本主義が順調なときでもそうなのだ。この資本主義がますます苛烈になっていったとき、女性の立場はさらに悪くなっていくというのは考えるまでもない。

女性は常に企業に捨てられ、国家に捨てられる。

さらに最近では家族の絆も薄らいでおり、男たちも自信をなくして結婚を避けているので、女性の孤立はとても深い。

女性が困窮したときに堕ちて行く先は売春や風俗となる。しかし、こうしたビジネスにも適性がある。誰もが割り切れるわけではないし、誰もがそれで稼げるわけでもない。底辺の売春や風俗は過酷だ。(ブラックアジア:野良犬の女たち(ストリート売春、そして流れ者の女)

夜のビジネスで楽に稼げるのはせいぜい20代後半までで、三十路(みそじ)を過ぎれば徐々に身体の商品価値は落ちて稼ぎにくくなる。

街を歩けば、女性たちの華やかな姿はいつでも見ることができる。しかし、その華やかさはとても脆弱な素材でできていて、社会の強い風が吹けば、すぐにでも壊れてバラバラなってしまうものでもある。

その恐ろしさを知っているのは、当の女性たちだろう。相対的貧困のギリギリまで日本女性を追い込んでいく社会が到来している。不安定な社会に変質する中、彼女たちの見る夢はどんな夢なのだろうか。(written by 鈴木傾城)

ブラックアジア:野良犬の女たち

 

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