動物を殺して食べる肉はもう古い? これからは「人工肉」の時代か?

動物を殺して食べる肉はもう古い? これからは「人工肉」の時代か?

アメリカではマリファナが一般化しつつあり、新しい時代の幕開けに入ろうとしている。マリファナは数年のうちに娯楽用も医療用も産業用も、アメリカの全州で解禁されることになっても不思議ではない。(マネーボイス:大麻ビジネスに乗り遅れる日本、世界はマリファナ巨大市場の誕生でハイになっている=鈴木傾城

ところで、マリファナほど目立たないのだが、アメリカでは「食」についても新たな潮流が始まっている。もし、これが一般化したら、このアメリカのイノベーションは全世界を完全にシフトチェンジしてしまうかもしれない。

それが「人工肉」である。

2019年1月11日からラスベガスで開催されていたCES(コンシューマー・エレクトリック・ショー)は、今後の世界の潮流を示す最先端の技術が展示される業界向けの見本市なのだが、ここで「Impossible Burger 2.0(インポッシブル・バーガー2.0)」というものが展示され、試食会が行われた。

これについては、「GIZMODE」や「engadget」が取材している。(engadget:肉汁滲み出る100%合成肉使用「Impossible Burger」がバージョンアップ。食感改善、グルテンフリー化

味はどうだったのか。もはや普通の牛肉とまったく変わらないものに「進化」していたという。そして、これがいよいよ2019年の後半からスーパーで買えるようになる予定なのだ。(GIZMODE:人工肉バーガーはうまい。うますぎた #CES2019


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

人工肉とは、実験室で育てて作る肉

この人工肉については、今後の人口爆発における食料問題の大きな解決策になる可能性がある。

現在約74億人だと言われている人口は、これからさらに増えていく。人口が増えると、それだけの食料を用意しなければならない。

現在でも大規模農業は水不足や農薬による汚染や土壌の荒廃によって深刻な問題が起きており、食糧危機は「予告されている危機」であると言われている。

異常気象が世界の穀倉地帯にダメージを与えれば、たちまちにして食糧危機は発生する。将来の危機を踏まえて、国連までもが「昆虫食」を勧めるようになっている。(ブラックアジア:いずれ、あなたの食事が「昆虫」になる時代がやってくる

こうした中で、食料問題に関して科学者からひとつの解決方法が出されているのだが、それが「培養肉」である。

オランダの科学者マーク・ポスト氏が牛肉の細胞から培養したと発表したのは2013年だった。培養された人工肉については、こちらが詳しい。(東洋経済:ヤバすぎる!「培養肉ハンバーグ」の衝撃

「培養肉」とは聞き慣れないものだが、それもそうだ。これは今までにない種類のものだからだ。だから、「培養肉」という言い方よりも「人工肉」という言い方の方が人々の間で使われるようになっている。

普通、私たちが食べる肉というのは家畜を飼育して、ある程度育てば屠殺して流通する。

しかし人工肉はそうではない。人工肉とは、動物の幹細胞を取り出して、それを実験室で育てて作る肉である。

幹細胞というのは、さまざまな細胞に分化する能力を持った特殊な細胞のことで、この幹細胞人工的に生育し、増殖させることで肉を作り出す。

科学で肉を作り出すのだ。

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食料問題さえも解決するようなインパクト

牛から取った幹細胞を培養して肉にすれば、それは牛肉のような味になる。豚から取った幹細胞を培養して肉にすれば、それは豚肉のような味になる。

今まで、こうして作られた肉はそれほど美味ではないとは言われていたのだが、研究や経験が積み重なって、いまや本物の肉と区別が付かない肉となった。

たった数個の幹細胞から「肉が育つ」と聞けば、何となく荒唐無稽なSFのように感じるが、すでに数年前にはこうした肉を科学者が作り出すことを成功させていたのだ。

そして、2019年にはいよいよこれが販売されることになる。

これを食べて害がないのか、何か毒性がないのかは、慎重に調査されなければならないが、基本的に成分は「本物の肉」と同様なので問題はないようだ。

もしそうだとすれば、これは非常に画期的な革新(イノベーション)であり、食品企業のすべてのビジネスモデルを転換させるばかりか、場合によっては食料問題さえも解決するようなインパクトもある。

何しろ、ひとつの幹細胞から1トンから5トン近い肉が培養できると言われている。

「人工肉工場」を大規模に展開したら、いくらでも肉が作り出せるのだから、肉は「工業製品」と同じ扱いになって、需要によって「製造」を増やしたり減らしたりすることができるようになる。

1999年のカンボジアの売春地帯では何があったのか。実話を元に組み立てた小説、電子書籍『スワイパー1999』はこちらから

人類の文化すらも変えるかもしれない

「人工肉」によって安定的に肉が供給されるようになり、それが消費者にも受け入れられるようになると、もう家畜に大量の餌を与えて飼育したり、屠殺したりすることもなくなる。

人工肉の方が一定の環境に保たれた工場で管理されながら生育されるので、家畜が持つさまざまな病気や伝染病を排除できるというメリットもある。

もし「人工肉」が大量に供給されるようになっていくと、それが受け入れられればられるほど、製造コストが下がって価格の問題も解決される。

あとは、これを人々が受け入れるかどうかだが、もしかしたら多くの人々は「工場で作られた肉など気持ち悪い」と考えるよりも「工場で作られた肉の方が安全で安心できる」と考えるかもしれない。

今、中国で飼育されている家畜には、抗生物質やホルモン剤が大量に含まれている。また病死した肉までが流通している。

このような素性の分からない肉を食べさせられるくらいなら、工場できちんと管理された人工肉の方がよほど安心だと思う人が出てきてもまったく不思議ではない。

「生物を屠殺するというのは残酷なことであり、動物虐待である」と考える人もいるわけで、そうした人たちも「肉を食べるなら、むしろ人工肉を食べたい」と考えるはずだ。

そのため、もしかしたら人工肉が流通するようになると、一気に人工肉の方が主流になり、従来の肉の方がレアになっていくかもしれない。

あくまでも安全性が確認されて、消費者にその味が受け入れられたらという前提ではあるが、今まで想像もできなかった「人工肉」という革新的技術は、これが主流になれば人類の文化すらも変える出来事になる。

地獄のようなインド売春地帯を描写した小説『コルカタ売春地帯』はこちらから

方向性としては「食べ物は工業製品」

すでに野菜も、「植物工場」で作られつつある。しかし、工場で作られた野菜は今の所コストがかかりすぎて、まだうまく軌道に乗っていない。

何しろこうした野菜は、太陽の光ではなく人工光で育てることになる。そのため工場の設備や電気代でかなりのコスト増となり、それが価格に転嫁されると従来の野菜よりも高くなる。

野菜に関しては、従来通りに育てた方が今のところ効率が良く、価格も安い。

しかし、「野菜工場」というアイデアは試行錯誤されて継続しているので、どこかのタイミングで「野菜工場」も軌道に乗る可能性が高い。そうなると、野菜まで工場で作られるのが当たり前になる。

もちろん、すべての食べ物が工場生産に置き換えることになるわけではない。そもそも、米や小麦はまだこのような科学で作られるわけではないので、従来通りの「穀倉地帯」が必要になる。

しかし、人口増加がこれからも続く以上、方向性としては「食べ物は工業製品」の扱いになっていくわけで、一部は間違いなくそういった技術革新で置き換えられる。

私たちは、食べ物を生み出す場所というのは、「田舎の光景」を思い浮かべる。そこには田畑があって、牛や豚や鶏が放牧されていて、農家の人たちが大地と格闘する姿である。

しかし、こうした光景の一部は確実に「工場」に吸収されていき、過去のものになる。少なくとも畜産に関しては「人工肉」の実験が成功したら、通常のやり方は野蛮で効率が悪いとして確実に消える。

人工肉とはそれほどインパクトを持った出来事になる。

2019年後半から売り出される「人工肉」が成功するのかどうか、軌道に乗るのかどうかは、今のところまだ未知数だ。しかし、これがコスト的にも軌道に乗ったら、私たちの食べる肉のすべては「人工肉」に置き換えられても不思議ではない。

新しい時代がやってきている。(written by 鈴木傾城)

 

2019年後半から売り出される「人工肉」が成功するのかどうか、軌道に乗るのかどうかは、今のところまだ未知数だ。しかし、これがコスト的にも軌道に乗ったら、私たちの食べる肉のすべては「人工肉」に置き換えられても不思議ではない。

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