日本でホームレスが減っているのを単純に喜んではいけない理由とは?

日本でホームレスが減っているのを単純に喜んではいけない理由とは?

日本では1990年のバブル崩壊以後に企業が不良債権を抱えて身動きが取れなくなり、1990年代後半から求人を極度に減らし、非正規雇用をじわじわと増やす動きを加速させていた。

これを加速させたのが小泉政権なのだが、この時期にまともな仕事に就けない若年層が爆発的に増えていき、それが「格差問題」として認識されるようになった。

本来であれば、無収入の彼らは家賃すらも払えないので住所を失うところだったのだが、そんな彼らを親が自分の家に住まわせて養ったので、彼らはかろうじて路頭に迷う状況をまぬがれた。

親に頼れない若年層は、かろうじて見つかった日雇いの仕事を転々としながらネットカフェで生活するようになっている。

しかし、仕事が見つからない時はどうするのか。そんな時、彼らはマクドナルドで100円のコーヒーだけを注文してそこで寝るか、もしくは公園のベンチや駅の片隅や高速道路の下や河川敷のようなところで夜を過ごす。

まさに、ホームレスである。しかし、彼らは仕事が見つかればネットカフェに戻っていくので、「一時的ホームレス」であって「長期間ホームレス」ではない。そのため、なかなか行政に補足できないという点がある。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

貧困層は増えたがホームレスは減った

厚生労働省によって行われているホームレス調査によると、ホームレスはどんどん減っている。

2007年の調査では、厚生労働省の職員の目視でカウントされたホームレスは1万8564人だった。これが2017年には5534人にまで減少している。ざっと見ても、約70%もの減少だ。

格差がどんどん開き、日本人全体が収入が減り、貧困層が増えているのだが、あからさまなホームレス自体は減っている。これは、体感としても東京都や大阪府に住む人々には感じるかもしれない。

かつて大都市の地下通路は、ホームレスのねぐらになっていた。ところが、現在ではこういったホームレスは非常に徹底した追い出しが行われている。

それでも、地下通路に集まって段ボールで寝ているホームレスの姿もあるのだが、その姿は以前とは比べものにならないほど減ったことを感じるはずだ。

都市公園や河川で寝ているホームレスも「憩いの場を不法占拠している」という理由で追い出されている。しかし、追い出されたら、ホームレスは自立に向けて立ち上がっていったのだろうか。

いや、そうではない。自治体の職員は、こうしたホームレスを今、片っ端から「緊急一時宿泊場」や「ホームレス自立支援センター」に押し込んでいる。そのため、統計に記録されないようになっている。

さらに、かつてのドヤ街であった東京の山谷、横浜の寿町、そして大阪のあいりん地区のようなところでもホームレスが減っているのだが、なぜなのか。

それは彼らが豊かになったのではなくて、実は貧困ビジネスが定着したからである。

ブラックアジアでは有料会員を募集しています。よりディープな世界へお越し下さい。

ホームレスを「メシの種」にする

今の日本では、ホームレスを「メシの種」にする貧困ビジネスが横行するようになっている。

ホームレスを無理やりドヤに収容し、彼らに生活保護を受けさせる。ドヤに住まわせる代わりに、その生活保護費のほぼすべてを毟り取る。このようなビジネスがスタンダードになったのだ。

2014年以後、私は東京の「山谷地区」、大阪の「あいりん地区」、横浜の「寿町」と言ったドヤ街を繰り返し訪れているのだが、どのドヤ街も宿泊施設をよく見れば、そういった貧困ビジネスを手がける宿が林立していることに気づいた。

昨今の生活保護受給者の増加は、もはや半分以上が高齢者になっているのだが、この中には高齢ホームレスを無理やりドヤに詰め込んで生活保護を略奪する貧困ビジネスがドヤ街を席巻していたのだ。

現代はホームレスでさえ金儲けの手段にされていて、骨までしゃぶられている。何のことはない、かつて路上で寝ていたホームレスは、カネのために貧困ビジネスをする業者が引き取っていたのである。

これらの業者はホームレスが餓死しない程度に生活保護受給金からわずかな金額だけを与えて、残りは自分たちのものにする。ドヤのひとつの部屋に押し込めるだけ押し込んでコストを削減し、どんどん頭数を増やして儲ける。

ホームレスはそういったところに吸収されて、数を減らしていた。

ホームレスが減ったという厚生労働省の統計をそのまま「良いことだ」と思ってはいけないのは、こうした「あこぎな貧困ビジネス」の結果としてホームレスが減少している事情が、いっさい考慮されていないからだ。

「日本は豊かだからホームレスが減っているのだ」と言っているアナリストもいた。あまりにも無邪気だ。アンダーグラウンドの恐ろしさを分かっていない。ホームレスが減っているのは、生活保護というシステムを食い物にしている業者がいるからなのである。

地獄のようなインド売春地帯を描写した小説『コルカタ売春地帯』はこちらから

厚生労働省の統計が正確になる時

先日、私は歌舞伎町でひとりの女性に会った。冷たい風が吹きすさむ中で、じっと売春する相手を探している女性だった。しかし、彼女は途中で怖気づき「やっぱり止めます」と言った。

後でいろいろ考えてみたのだが、彼女はネットカフェの住民だったのではないかと私は思ったのだった。その理由は記事の中で書いた。(ブラックアジア:ストリート売春をしていた女性が「やっぱり止めます」と震えて言った

歌舞伎町を注意深く歩いている人間は誰もが気づくはずだ。その日本最大の歓楽街には、あちこちにネットカフェが林立している。

そして、そこにホームレス寸前の若い女性が大量に居着いていて、彼女たちの少なからずが売春をしていたり、風俗の仕事についていたりする。

さらに、激安デリヘルの待機場もまたネットカフェになっている。激安デリヘルで働く女性にはネットカフェ暮らしの女性もいるのだから、業者は待機場を用意する必要がない。

このネットカフェには、日雇いで暮らしている男たちもまた大量に住み着いているのだが、彼らもまた繁華街のど真ん中でホームレスになるかならないかの瀬戸際のところで生きている。

地代の高い歓楽街でネットカフェの経営が成り立ち、しかもそれが林立していることから「ホームレスになる一歩手前で踏みとどまっている人間」がいかに多いのかを私たちは気づくべきだ。

極貧の若年層は、今やみんなネットカフェという「特殊な寝泊まり場所」を転々としている。

彼らは今でこそ「若年層」という括りだが、すでに30代を超えている人も多いわけで、年齢がいけばいくほど綱渡りが厳しくなって、どうにもならなくなっていく。

彼らもまた、将来の「生活保護予備軍」である。いずれ貧困ビジネスに絡み取られて、確実に生活保護費を搾取されることになる。

こうした状況を俯瞰すると、日本のホームレスが減っているのは「生活保護というシステムが今はまだ機能しているから」ということに気づくはずだ。

もし日本政府が膨れ上がる社会保障費に悲鳴を上げて、食い物にされている生活保護費から貧困ビジネスを排除するようになったらどうなるのか。

あるいは生活保護というシステムが根幹から破綻したりすると、私たちは何を見ることになるのか。信じられないほどのホームレスが街に溢れるのを見ることになる。ホームレスで溢れかえることになる。

よく世界を見て欲しい。生活保護というシステムが成り立っていない国は、ホームレスだらけではないか。日本も生活保護が破綻したら当然そのようになる。皮肉なことだが、その時こそ厚生労働省のホームレス調査の統計は正確になる。(written by 鈴木傾城)

厚生労働省によって行われているホームレス調査によると、ホームレスはどんどん減っている。2007年の調査では、厚生労働省の職員の目視でカウントされたホームレスは1万8564人だった。これが2017年には5534人にまで減少している。

 

この記事のツイッター投稿はこちらです

この記事を気に入って下さった方は、リツイートや♡(いいね)を押して頂ければ励みになります。

ブラックアジア会員登録はこちら

CTA-IMAGE ブラックアジアでは有料会員を募集しています。表記事を読んで関心を持たれた方は、よりディープな世界へお越し下さい。膨大な過去記事、新着記事がすべて読めます。売春、暴力、殺人、狂気。決して表に出てこない社会の強烈なアンダーグラウンドがあります。

格差カテゴリの最新記事