フランスの反政府デモ。政治の閉塞は必ず最後には社会的暴力を生み出す

フランスの反政府デモ。政治の閉塞は必ず最後には社会的暴力を生み出す

フランスのエマニュエル・マクロン大統領はフランスで最も権威のある大学であるパリ第10大学(パリ・ナンテール大学)を卒業したエリートだ。

もともと聡明だったマクロンは14歳の頃に出会った美しき女教師ブリジットに恋して身も心も一心同体と化して聡明さに磨きをかけた。

大学を卒業してからも道を誤ることもなく出世街道をひた走り、最後に行き着いたのは名門ロスチャイルド&Cie銀行だった。

そして、ロスチャイルド財閥の後ろ盾で政界に進出したと思うと、すぐに政治団体「アン・マルシュ!」を設立し、2017年5月にはあっという間に39歳の若さで大統領に上り詰めた。

2017年のフランスはイスラム過激派のテロやフランソワ・オランドの優柔不断な政治運営で疲弊しており、EU(欧州連合)反対・移民反対を明確に謳うマリーヌ・ルペンが急激に台頭している時期だった。

もし、マリーヌ・ルペンが大統領になったらEUは完全崩壊してヨーロッパは大混乱に見舞われる。EUという枠組みを死守したいエスタブリッシュメントは、エマニュエル・マクロンを送り込んでマリーヌ・ルペンを止めた。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

マクロン大統領に裏切られたと考えるようになった

エマニュエル・マクロンという若き大統領を、世界のマスコミは「EUの救世主だ」「若き指導者だ」と絶賛した。その若さと決断力と実行力に、フランス国民も大いに期待した。

マクロン大統領は自身の内閣を、フランスの巨大企業であるダノンやダッソーの役員たちで固め、フランスを成長させるという名目でどんどんフランスの労働法の改正や自由化の促進や規制緩和や民営化を進めていった。

歳出の削減や防衛費の削減や公務員の給料増の歯止めも強引に行った。何も決断できなかった前大統領とは180度違い、マクロン大統領は強引で強硬だった。

フランス国民は、このハンサムな新指導者が国民の声を汲み取って政治に反映させるはずだと思っていた。

しかし、マクロン大統領はフランスの財政を立て直すために税収を引き上げることを目論み、それが「燃料増税」という形で明確になると、国民はマクロン大統領に裏切られたと考えるようになった。

フランス国民はマスコミの絶賛を鵜呑みにし、マクロン大統領は国民の味方だと思っていたのに、マクロン大統領は年金受給の年齢を引き上げ、富裕税を撤廃し、各種公共施設の民営化し、徴兵制を復活させ、燃料増税を押し付けようとしていたのだ。

マクロン大統領は金持ちや多国籍企業は優遇するのに、国民には負担しか強いない大統領だと国民は喝破した。

そして、2018年11月。燃料増税への反対を表明する抗議デモが引き起こされて、それがフランス全土に広がり、抗議デモはやがて反政府デモへと転化して暴動化した。これは「黄色いベスト運動」となって、今もフランスを揺るがしている。

マクロン大統領は追い詰められている。

当初は「中立」と言っていたマクロン大統領だったが、結局はこの大統領もただのエスタブリッシュメント優遇の政治家でしかなかった。

グローバル化で企業に使い捨てされ、移民の大量流入で賃金低下に悩み、治安の悪化とテロの連鎖で怯えるフランス国民の忍耐力はもはや限界だった。それが暴動という形になって噴出しているのがフランスの姿である。

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いつか必ず格差問題に起因する社会破壊が起こる

フランスはこれからどうなるのだろうか。もしかしたら、再びマリーヌ・ルペンが台頭するかもしれない。あるいは、もっと過激なリーダーを生み出すかもしれない。

少なくとも、エスタブリッシュメント出身の既存の政治家がいつまでもそこにいられるわけではない。

社会はいつの時代でも何らかの矛盾が発生し、それに対する不満が充満していくと、必ず国民の激しい突き上げが起きて、どこかのタイミングで体制が転覆するものだ。

それはいつの時代でも、どこの時代でも起こり得る。

現代社会は弱肉強食の資本主義社会だ。この容赦ない資本主義が長らく続くと、持てる者と持たざる者を極端に分離させてしまい、やがては一部の人間だけがすべてを独占するようになる。

これは資本主義の必然なのだが、同時に大きな社会矛盾だ。この格差がいずれ巨大な社会不安を生み出していき、やがてはある時期に持たざる者の不満を爆発させる起爆剤になっていくのだ。

資本主義は終わることはない。なぜなら、この資本主義こそが現代の文明を支えているコアの部分となっているからだ。しかし、資本主義は経済格差を増長させる仕組みが内在されている以上、いつか必ず格差問題に起因する社会破壊が起こる。

世界のどこで起きるのかは分からない。しかし、極端な格差がある社会ではどこでもそれは起きる。人々が立ち上がり、社会的なムーブメントとなり、やがては社会のあり方そのものを極めて「暴力的」に変えていく。

社会不満は、やがては象徴となる反体制派のリーダーを生み出していく。

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公民権運動は、非暴力から暴力煽動に変質した

かつて1960年代にアメリカで起きた、公民権運動を振り返って欲しい。公民権運動は、黒人への差別・黒人への格差の是正を求めた息の長い運動だった。

実際には黒人だけではなくユダヤ人等の権利尊重をも含めたものであり、まさに現代社会が問題にしている「格差是正」の先駆けのような大衆運動だった。

最初に運動を平和的に進めていたのは、マーチン・ルーサー・キング牧師だった。キング牧師は粘り強く、そして明確な非暴力で巨大な権力と対峙し、そして支持を広げていった。

しかし、相変わらず白人による黒人差別が続いたことに、徐々に苛立ちを隠せなくなった黒人たちから、キング牧師の説く非暴力主義から離れる一派が生まれた。

その中でもネーション・オブ・イスラムのスポークスマンであったマルコムXがその雄弁で攻撃的な演説で人々の心を奪っていくようになった。

マルコムXはいまだに多くの黒人たちの心を捉えているが、その演説は非常に攻撃的だった。ストレートであり、容赦がなく、非暴力を否定し、暴力を示唆するものもあった。マルコムXはこのように言っていたのだ。

「今や黒人はアメリカの敵であり、あなたがアメリカのトラブルなのだ!」

「非暴力で得られるのはトイレを使っていいかどうかだけだ。本当は我々黒人は土地を要求しなければならない」

「黒人の中にはハウス・ニグロという人種がいて、彼らは白人のご主人様のご機嫌を窺って生きている」

日本でも環境が整えば起きる日も来る

マルコムXの挑発的で暴力的な扇動は、しばしば物議を醸し出して、まさに白人にとっては悪魔のような存在になった。

しかし、そうなればなるほど、逆に黒人層の支持者が増えていき、キング牧師が主導していた公民権運動の最初のイメージである「非暴力」が消し飛んでいった。

やがてマルコムXは暗殺され、マーチン・ルーサー・キング牧師も暗殺されていった。

そうなると、さらに暴力性は増していって、次に黒人の心を捉えたのは、「暴力には暴力で対抗する武闘組織」であるブラックパンサー党だった。

非暴力から始まった公民権運動は、最後には徹底した暴力が支配する運動へと変質していったのだ。平和デモが限界を見せて、人々が「いくら非暴力で何かを言っていても無駄だ」と思ったとき、いつでも暴力が伴う革命へと変質していく。

そして世の中が動乱に落ちていく。

現代社会の大きな問題は、資本主義が生み出した「格差」というひずみだ。人々を次々と貧困に突き落として這い上がれなくするこの問題は、いずれ人々の不満と憤怒を引き起こす。

そして、誰かが「暴力」で社会に対抗しようと立ち上がる。たったひとりの男でも国際世論を震撼させることもできる。

世界の「格差問題」はまだ解決されていない。解決どころか悪化している。だから、それが破壊を生み出すことになって誰が驚くのだろうか。閉塞した時代は、必ず最後には広範囲な社会的暴力を志向する。

そのような目でフランスで今起きている「黄色いベスト運動」を見ると、現代社会が抱えている怒りがそこに見えてくる。こうしたエスタブリッシュメントに対する反旗は世界中のどこでも起きる。

もちろん、日本でも環境が整えば起きる日もくる。日本もグローバル化に飲まれており、格差が広がっており、移民の大量流入もあるからだ。フランスが抱える問題はそっくりそのまま日本にもある。そうであれば、爆発は時間の問題であるとも言える。(written by 鈴木傾城)

フランスで今起きている「黄色いベスト運動」を見ると、現代社会が抱えている怒りがそこに見えてくる。こうしたエスタブリッシュメントに対する反旗は世界中のどこでも起きる。

 

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