棺桶部屋に金網部屋。香港の極限的な住環境はこれからも改善されない?

棺桶部屋に金網部屋。香港の極限的な住環境はこれからも改善されない?

香港の貧困層の住環境は凄まじくひどい。香港は狭い土地なので、人口が密集すると住居がどんどん貴重なものになっていき、家賃がどんどん上がっていく。

そこに、中国大陸から金持ちがどんどん香港の土地を買い漁っていく。そうなると、カネがない人間は住居に困窮することになる。

その結果、どうなったのか。

貧困層はもはや畳一畳の空間くらいしか持てなくなった。2013年にはブラックアジアでこのような記事を上げている。(ブラックアジア:先進都市「香港」で暮らす貧困層の、劣悪で問題のある住環境

広大な土地のある国の貧困層は、スラムが沼地や川沿いや線路脇のような誰も住まないようなところに広がる。

しかし香港は、札幌市くらいの面積の土地に730万人がぎゅうぎゅう詰めに押し込まれているので、平地にスラムを作ることすらもできない。そのために、ビルの屋上がスラムになる。

そんな場所柄なので、貧困層の住む「住処」は、もはや住居ではなくなって「狭い部屋」と化しており、ベットひとつ置いたらもう他には何も置けないような、そんな状況になってしまっている。

香港人の貧困層はこれを自虐して「棺桶部屋」と呼ぶ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

棺桶部屋に金網部屋。香港の極限的な住環境

棺桶部屋は閉塞感漂う空間だ。ほんの数日であれば耐えられるかもしれないが、将来の展望もなく、何年も何年もここで暮らすとなると閉塞感に発狂してしまうかもしれない。

私も大阪のあいりん地区でドヤに泊まったことがあるが、それがちょうど香港の「棺桶部屋」とよく似た空間だった。(ブラックアジア:鈴木傾城、あいりん地区で1泊1000円のタコ部屋に沈む

ただ、それでも部屋があるだけマシというのが香港の事情で、こうした棺桶部屋の家賃すらも払えない高齢者は「金網ベッド」に暮らしている。ドミトリーみたいなところなのだが、ベッドが金網の中に入っていて、そこで寝る。

こうなれば、もう人間というよりも家畜のような扱いだ。

香港の人口は約730万人。実は大陸から違法に流れてきた人間たちも100万人規模で存在すると噂されているので、実際には800万人を超えている。この中で、香港当局が把握している貧困層は約137万人。

貧困層は社会保障もなく放置されており、今後も改善させる見込みはない。なぜなら、背後には大陸の9億人近い貧困層が控えており、130万人に手厚い補償をしたらたちまち新たな貧困層が「補充」されるからだ。

「最低賃金を上げよ」と言っても、上げたらまた低賃金で働く人間が香港に流れ込む状況では如何ともしがたい。

香港の人口は約730万人。実は大陸から違法に流れてきた人間たちも100万人規模で存在すると噂されているので、実際には800万人を超えている。この中で、香港当局が把握している貧困層は約137万人。

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香港の超高級マンションに付けられた壮絶な価格とは?

香港で発行されている日刊紙『サウスチャイナ・モーニングポスト紙』は、最近も香港の住環境を嘆く記事を上げているのだが、状況は5年前からまったく変わらず、むしろ悪化しているのである。

香港当局は、大陸からやってくる人口を厳しく管理し、貧困層には住宅補助金を出すことで対処している。しかし、大陸が不況に落ちると、香港当局の努力は限界を超えてしまう。

香港の住宅価格は世界でもトップクラスである。東京はおろか、シンガポールよりもさらに高い。

世界で最も土地が高いのは超富裕層が集まるモナコだが、香港はその次に高い。東京は16位であり、世界水準からするとまだまだ安いと言わざるを得ない。少なくとも香港よりも半分以下であると言える。

土地はロケーションや建物によってピンからキリまで違いがあって一般化するのは意味がないのだが、香港の住宅価格は日本の二倍以上であるのは間違いない。

香港人がどれだけ住居の高さに苦しんでいるのか知りたければ、今住んでいる家賃を二倍にして、自分がやっていけるかどうかを考えればいい。

2017年10月、世界を驚かせたニュースがあった。「香港で販売された高級マンションの価格がアジアでの最高値記録を更新した」というのである。いくらだったのか。

マンション一戸約75億円だった。

一戸で二階建て構造になっている超高級マンションであるとは言えども、さすがに75億円というのはあまりにも壮絶だ。しかし、それが香港の状況である。

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「空間」は高価だから貧困層は閉塞的な空間に押し込まれる

香港当局がいくら地価の抑制に動いても、人口過密が解消できない。そうであれば為す術がないのだから、このようなことになっても仕方がないと香港人はもはやあきらめの境地にある。

そうではあっても、誰も好き好んで棺桶部屋や金網ベッドに住みたくないので、必死で安い物件を探し回って何とかそこに潜り込むしかない。

日本も含めて、どこの国でも「事故物件」は価格が下がる。人が自殺したり、殺されたりした部屋で誰も住みたくない。いくら安くても、毎日そこで暮らすにはあまりにも縁起が悪いと思う。

ところが、香港ではこの「事故物件」も大人気で住みたいという人が殺到する。相場よりも安いのだから、縁起が悪いと言っている場合ではない。2017年には、こうした事故物件のマンションが576室売り出されたが、ここに8万人を超える申し込みが殺到したとロイターは報じている。

現代社会は仕事やサービスを都市に集約させている。いくら都会で消耗したとしても、人々は都市に集中する傾向は避けられない。

日本も他人事ではない。

日本でも不安定な仕事を余儀なくされている人たちがシェアハウスやネットカフェに住むようになっているのだが、香港の貧困層と似たような閉塞的なスペースしか手に入らないようになっている。

「空間」は高価だ。そのため、貧困層は閉塞的な空間に押し込まれる。貧困層は空間で苦しんでいると言える。(written by 鈴木傾城)

「空間」は高価だ。そのため、貧困層は閉塞的な空間に押し込まれる。貧困層は空間で苦しんでいると言える。

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