社会環境が悪化するほど「金持ちが長生きして貧困層は早死にする」となる

社会環境が悪化するほど「金持ちが長生きして貧困層は早死にする」となる

米ライス大学とコロラド大学ボルダー校の共同研究では、アメリカ人の寿命は1930年代は59.85歳、ざっくり言えば約60歳だったのだが、これが2000年代になると77.1歳になっており、70年で驚異的な寿命の伸びが確認されたという。

しかし、悲しいことがある。

1940年代生まれの富裕層と貧困層の寿命を分けると、貧困層の寿命は圧倒的に短くなっており、最大では富裕層よりも12年も早く亡くなる。

同じ結論は2016年に米医学界の学会誌「ジャーナル・オブ・アメリカン・メディカル・アソシエーション」が指摘している。富裕層と貧困層の平均寿命は今も拡大し続けている。

超富裕層と絶対貧困層という風に、収入の差を広げていけばさらに寿命の差は明確になる。絶対貧困で暮らす人たちは超富裕層に比べて男性は14.6年、女性は10.1年も短かった。

アメリカの貧困層は、パキスタンやスーダンのような途上国の人たちの平均寿命と同じなのである。貧困に堕ちたら、先進国に生まれても後進国で生まれても関係ないということだ。

ただし、都会の貧困層は都会のインフラを利用できることもあって、貧困層でも若干は長生きできるようだ。もっとも、それでも富裕層の快適な環境と寿命を手に入れることができないのだから慰めにもならない。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

身体の具合が悪いからと言って仕事を休めない

富裕層が貧困層よりも長生きするというのは、2つの見方があるのに気付かなければならない。「金持ちは長生きする」という見方と、「貧困層は早死にする」という見方だ。

どちらが正しいのかというのではなく、「金持ちは長生きする」という現象と「貧困層が早く死ぬ」という2つの現象が同時並行で起きているというのが正しいのだろう。

医療が充実し、早期治療や健康維持の方法が確立されていくと、富裕層も貧困層も同時に恩恵を得る。しかし、どちらかと言えば富裕層の方が受ける恩恵が大きい。

なぜなら、医療は「ただではない」からである。

病院で検査を受けるのも、高度医療を受けるのも金がいる。金がモノを言う。富裕層には問題がない金額でも、それは貧困層には大きな問題になることが多い。

金がかかると思ったら貧困層は医者に行かない。本当であれば医者にいかなければならないような病気やケガでも放置して、それを重篤化させてしまうことが多い。医療費のことを考えると、二の足を踏むのである。

その前に、時間の余裕がたっぷりある富裕層と違い、貧困層は身体の具合が悪いからと言って仕事を休んでしまえばたちまち生活に窮するので休めない。

貧困の途上にある人は歯や歯茎の治療なども放置することがよく知られている。最近、私はひとりの日本女性を通してこのことを再確認した。(ブラックアジア:町田にいた野良犬の女。スマートフォンが圏外になってストリート売春(1)

虫歯や歯石や歯槽膿漏などは早期に治療を受けていれば完治できるものだが、放置しておくとどんどん歯が悪くなって最終的にすべてを失うこともあり得る。

本当は早い段階で治療を受ける必要があるのだが、生活に余裕がなければ、どうしても治療よりも仕事を優先してしまうことになる。

あらゆる身体の不調を放置するので、それが積もり積もって寿命に反映されていく。歯を失うと固いものなどがうまく食べられなくなり、それで栄養が偏るようになって寿命が短くなるというのはよく知られている。

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富裕層と貧困層は、食べているものも違う

富裕層と貧困層は、食べているものも違う。富裕層が少々高価でも、オーガニックで栄養価が高く、健康的で、身体に優しいものを継続的に買える収入がある。そして、たまにジャンクフードが食べたいと思ったら、それを食べることもできる。

富裕層でもジャンクフードばかり食べている人もいるのだが、そうしたければそうするし、食べたくなければ食べないという「選択肢」が与えられている。健康を害したら気をつけることができる。(ブラックアジア:貧困層も富裕層もみんなジャンクフードの虜になる現代社会

しかし、貧困層は「選択肢」がない。カロリーが高くて身体に悪くても、安いものだけを選んで食べることになる。安い価格でカロリーを取ろうと思うと、砂糖と添加物と油脂と加工物でまみれたジャンクフードが主になる。

それしか食べられないので、栄養のバランスなどほど遠い食生活だ。

こうした食事はたまに食べるくらいならいいのだが、それを常食するとやがて体調を悪化させ、病気やケガをしやすい体質になっていく。

富裕層は食べれば食べるほど健康になるのに、貧困層は食べれば食べるほど不健康になっていく。

グローバル経済は、食品に関してもどんどんコストを下げて安いものを大量に売るために品質を次第に劣悪化させていく。そして、消費者をリピーターにさせるために、砂糖や油脂のような常習と依存を生む物質を意図的に含有させる。

多国籍企業の作り出す食べ物というのは、そのほとんどは常軌を逸する量の砂糖をまぶし、油脂をどっぷりと含ませたものである。

そうすれば、消費者が常食し、依存し、その結果として商品が売れるのだから、批判されても絶対に止めない。

富裕層は教育の中でそうした食品が身体に悪いことを知り、避け、より良い食品を選んで食べるようになることが多い。親が子供の健康を守るためにそうする。

しかし貧困層は、教育よりもテレビに影響されて毒々しい食品を食べるように洗脳されており、自らジャンクフードに飛びついて離れられない。

後でそれが身体に悪いと言われても、もうすっかり中毒になっているので止められない。そして、身体を壊すまでそれを食べ続けて、最後には寿命に影響する。

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貧困層の暮らす劣悪な環境とはどんな環境なのか?

富裕層は快適な環境の中で、ストレスなく暮らすことができる。貧困層は劣悪な環境の中で、様々なストレスを抱えながら暮らすことになる。

途上国に行って劣悪な安宿やスラムに泊まると、「劣悪な環境」というのがどんな環境なのかすぐに知ることになる。

エアコンなどないので、部屋は気が狂うほど暑い。部屋の中で蒸されて意識が朦朧とすることもある。シャワーを浴びようと思うと水が出なかったり、水が濁っていたりする。

そもそもシャワーなどなくて、雨水が溜まったバケツの濁った水を浴びるのがシャワーだというところもある。1990年代後半のカンボジアでは、ほとんどがそうだった。(ブラックアジア:「売春地帯をさまよい歩いた日々:カンボジア編

食事中はハエが食べ物にたかり、夕方になったら蚊の大群が襲いかかる。中にはマラリア蚊もいたりするので、蚊に刺されてマラリアになる人も多い。

ベッドに横になると今度は南京虫が襲いかかってくる。東南アジアのスラム、あるいは南アジアのスラムは南京虫の温床になっているベッドも多い。(ブラックアジア:トコジラミ。部屋に入ったらベッドのシーツをまくって裏を見ろ

飲み水はドブのような臭いがしたり、食べ物にも虫が混じっていたりするのは日常茶飯事だ。

貧困層というのは、そんな劣悪な環境の中で暮らし、劣悪な仕事に就き、劣悪な食べ物を食べるしかなく、医療の恩恵にもあずかれない。

そして、そんな環境から抜け出せない絶望感もあれば、自暴自棄もある。これで富裕層と貧困層の寿命が同じだったら、それこそ奇跡であると言わざるを得ない。

結局、貧困層はこうした劣悪な環境に追い込まれてもがくしかない人生が待っており、それが寿命に反映して「金持ちが長生きして貧困層は早死にする」という統計となって表れる。

現代の資本主義は、歯止めがきかない弱肉強食の資本主義と化している。社会環境が悪化すればするほど「金持ちが長生きして貧困層は早死にする」は鮮明になっていく。

自分の寿命が長いか短いかは、資産があるかないかで決まるのだ。これは、誰もが薄々と気付いているけれども、あえて見ようとしない暗い現実でもある。(written by 鈴木傾城)

バングラデシュ・ダッカで知り合ったホームレスの少女。時々、途上国の旅の途上で知り合った子供たちや人々がどうしているのか考えることがある。厳しい環境の中で、滞りなく生き残るというのは、並大抵のことではない。

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